カテゴリー別アーカイブ: デンマークの地方自治情報メモ

地方自治体が8000人を解雇する可能性がある

2010年05月01日 

<概要>
ラスムセン首相は昨日、保健衛生部門及び教育部門への資金を増加する計画を発表したが、これを実現するためには、政府及び地方自治体は100億デンマーク・クローネ(約1500億円)のコストを削減する必要があると警告した。100億デンマーク・クローネの配分内訳は、50億デンマーク・クローネ(約750億円)が保健衛生部門、20億デンマーク・クローネ(約300億円)が教育部門、30億デンマーク・クローネ(約450億円)が社会的弱者支援である。

<削減額>
地方自治体は全体で8000人分の人件費に相当する40億デンマーク・クローネ(約600億円)の予算を削減する必要がある。地方自治体予算を2012年及び2013年に0.75%削減、又は2300億デンマーク・クローネ(約3兆4500億円)から2260億デンマーク・クローネ(約3兆3900億円)へ削減することを見込んでいる。
同様に、政府は60億デンマーク・クローネ(約900億円)の削減を求められている。
ラスムセン首相は、「人員削減を行うかどうかは個々の地方自治体次第であり、また地方自治体の2011年予算は現状維持である。予算削減を行うことも、45万人の職員を8千人削減することも容易ではないことから、政府は地方自治体に準備期間を与えるため、予算削減を2012年及び2013年に行うこととした」と説明している。
<地方自治体の反応>
労働組合と各市長は、この提案に対して憤慨し、住民向けのサービスに大きな影響が出るだろうと述べた。
また、オーデンセ市長は「サービス削減を検討していることは間違いない。オーデンセ市では、教員、保育士、介護職員を含む240人から250人の職員を解雇する必要があり、全部署に影響が出るだろう」と述べている。

【出典】The Copenhagen Postのウェブサイト
http://www.cphpost.dk/news/politics/90-politics/48797-councils-to-fire-8000.html


デンマークにおけるインターナショナルスクール増設案

2010年03月08日 

デンマークでは、海外から赴任する高度な技術を持つ者の子供が通うインターナショナルスクールが不足している。このことを受けてインターナショナルスクールの増設を盛り込んだ政府案が提出された。
高度な技術を持つ外国人がデンマークで将来働くことを考える場合、彼らの子供の教育が確保されることが重要である。そのため、現在デンマークでは歴史や数学など様々な分野において英語で授業が受けられるようになっている。
外国人労働者のためにインターナショナルスクールを増設するため、1月29日にBertel Haarder教育相はデンマーク国内におけるインターナショナル支援校の創設を提案した。
この案が可決された場合、デンマーク語以外の言語で授業が可能な私立学校が国内に分校を設立できるようになる。また国際的な試験を実施しておりデンマークへの進出を考えている中等教育課程にある私立学校も同様に分校を設置できるようになる。
Bertel Haarder教育相は次のように述べた。「すばらしい能力を持つ者を我が国へさらに引き入れる必要がある。将来において社会全体で創造力を強化し、知識を深めるためには、国際競争力は不可欠なものである。インターナショナルスクールを増設することにより、高度技術を持つ外国人労働者がデンマークで働くことを考える重要なきっかけとなる。」

【出典】デンマーク教育省ホームページ
http://www.eng.uvm.dk/Aktuelt/News/Eng/2010/Feb/100201%20More%20international%20schools%20to%20pave%20way%20for%20highly%20educated%20foreign%20labour.aspx


デンマークが環境技術国として第1位となる

2009年11月23日 

 Cleantech Groupのウェブサイトで、Shawn Lesser氏(Sustainable World Capital 代表)が2009年の環境技術国トップ10を発表した。
 この格付けには、政府の主導性や施策、大規模投資の枠組み、企業の技術革新や文化的社会的要因が考慮され、この格付けでデンマークは第1位となった。
 デンマークが1位となった理由は、デンマークが脱化石燃料100パーセントという目標を掲げただけでなく、環境技術で先進的な役割を担っていることが考えられる。また、風力技術発祥の地であるデンマークは、ヨーロッパ最大のエネルギー技術輸出国であり、ATP年金基金、AP年金やDONGエネルギーからの資金援助もある。またデンマークでは公共部門と民間部門の連携により知識の共有が促進され、起業を推進する雰囲気もあるため、環境技術モデル国としてふさわしいと考えられている。
 同氏の研究では歴史的な見解は含まれていないが、北ヨーロッパの小国であったデンマークは、1973年のオイルショックの時に外国の石油と石炭に依存することの危険性を突如認識させられてから、化石燃料依存からの脱却に長い間着実に取り組んできたことを忘れてはいけない。
 北海のデンマーク領では石油や天然ガスが産出されているが、その資源は時限的なものであり、国内で再生可能エネルギーを活用してエネルギーを自給自足でまかなうという政府の長期目標に影響を与えるものではなかった。この目標にさらに必要なものは、エネルギー利用を最大限に効率化させ、二酸化炭素排出を最小限に抑えることである。
(環境技術国 上位10位)
1. Denmark
2. Germany
3. Sweden
4. United Kingdom
5. Israel
6. Switzerland
7. United States
8. United Arab Emirates
9. China
10. Canada

【出典】デンマーク政府ウェーブページ
http://www.denmark.dk/en/servicemenu/News/Environment-Energy-Climate-News/DenmarkTheWorldsTopCleantechCountry.htm?wbc_purpose=B&WBCMODE=presen


グリーンランドの自治権拡大

2009年08月17日 

1 内容
 6月21日に約3百年間デンマーク統治下にあったグリーンランドがその自治権を拡大することとなった。
グリーンランドの人口は5万7千人で、その財政の約30%はデンマーク政府からの補助金に依存している。自治権の拡大に伴い、補助金が打ち切られることはなく、デンマーク政府はグリーンランドにおける防衛や外交については最終的な意思決定を行う。グリーンランドでは警察と裁判所については責務を負う。グリーンランド語が公用語となり、グリーンランド人は国際法上デンマーク人とは別の人種に位置づけられることとなる。
2 経緯
 1979年にグリーンランドは自治権(限定的自治権)を付与され、2008年11月の国民投票でデンマーク政府からの独立を推進するという意見が大多数となった。デンマーク政府はその投票の結果を重く受け止め、グリーンランドの自治権を拡大することとなった。
3 背景
 この自治権拡大の背景としては、グリーンランドに住む人々の次のような考え方が挙げられる。第一に、地球温暖化により、北極圏の氷床が減少し気温が上昇したことで、グリーンランド北部にあると考えられる石油、天然ガス、レアメタルなどの天然資源がより簡単に入手できるかもしれないということである。第二に、産業が現在の主要産業である漁業だけでなく多様化できるかもしれないということである。しかし、完全な独立について全体的にまとまった動きはなく、現グリーンランド自治政府は、独立よりもまずアルコール中毒問題、家庭内暴力や高い自殺率への対応に現在は焦点を当てる必要があると述べた。

(参考)
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/greenland/5594140/Greenland-takes-step-toward-independence-from-Denmark.html
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/8111292.stm


デンマーク環境政策

2009年06月29日 

昨年度の11月に首相より「Green Growth Vision」(環境成長指針)が発表された。
(指針概要) 
デンマークを環境技術の中心地へと変貌させることで多数の雇用創出を図ることを目的とする。目的の主なものとしては、再生可能エネルギーの開発、エネルギー効率の高い技術を持つ産業の育成、長期間安定してエネルギーを生み出す建造物(住宅など)の建築、環境に配慮した交通システムの研究、環境に配慮した飲食産業の育成があげられる。
以下その指針に基づいた環境に配慮した政策について報告する。
1 環境交通センターの設置(2009.7.7)
 ・環境に配慮した交通技術の向上を目的として交通省が設置。
・自動車排気ガスの二酸化炭素排出量の減少や自動車数の断続的な増加などの環境問題への解決の糸口となるさまざまな計画について検証を行う。
・二酸化炭素排出量を減少させるため、特定の地域において、タクシーへのエネルギー効率の規制、バンのエネルギー表示や空気力学を応用したトラックの導入などを行う。
・民間企業や地方自治体と協力してエネルギー効率の高い交通に係る大規模な調査を実施する。
2 デンマーク最大規模の沖合風力発電所設置準備(2009-5.5)
 ・2012年に完成予定であるこの風力発電施設では年間400メガワット(約40万世帯分)の発電能力を持つ。
 ・環境大臣はこの風力発電施設について「化石燃料に依存しないことを目標とした政府の指針を現実的なものとする大きな一歩であり、再生可能エネルギーの開発と二酸化炭素削減という目標に向けた重要な政策である」と述べた。
 ・この風力発電所の入札に先立ち、Energinet.dk(デンマークの通信システムオペレーター)が事前に海底地勢調査を行い、また地域住民集会も実施される。
 ・なお、Energinet.dkは海底の地下鉄の設置と風力発電所と地上の発電所の接続を担当する。
・入札期限は2010年4月7日である。
・デンマークでは現在8基の沖合風力発電施設があり、その総発電能力は424メガワットである。

(関係リンク先)
デンマーク外務省ホームページ
http://www.investindk.com/visNyhed.asp?artikelID=22213
http://www.investindk.com/visNyhed.asp?artikelID=20734
デンマーク環境省ホームページ
http://kemin.dk/en-us/newsandpress/news/sider/denmarkslargestoffshorewindfarmreadyfortender.aspx


収斂プログラム2008の策定

2009年03月12日 

2008年12月、デンマークの収斂プログラム(Denmark’s Convergence Programme 2008)がEUに提出された。
EU加盟国は、EU安定成長協定(Stability and Growth Pact)に基づき、加盟国の財政政策の監視と協調等のため、中長期的な財政政策等について、EU加盟国のうちユーロ加盟国については安定プログラム(Stability Programme)を、ユーロ非加盟国については収斂プログラムを、毎年提出することとなっている。
今回のデンマーク収斂プログラム2008は、2007年8月に策定された2015年計画(2015-plan)のアップデートでもあり、2008年12月に発表された経済調査概況(Economic Survey December 2008)等に基づいて策定された。
当該プログラムは、2015年までの財政政策の基本方針と優先事項についてまとめたものであり、昨今の世界金融危機によって厳しい状況におかれてはいるものの、2015年までの財政の持続可能性と構造的な黒字化に向けて、順調に進んでいるとしている。
これらの目的を達成するため、2万人の雇用創出や、最近の平均従業時間の短縮に対抗するような構造的改革が、実施されているとしている。

【出典】
デンマーク財務省ウェブサイト
http://uk.fm.dk/Publications/2009/Denmarks%20Convergence%20Programme%2008.aspx
ECウェブサイト
http://ec.europa.eu/economy_finance/sg_pact_fiscal_policy/fiscal_policy528_en.htm


改革プログラム2008の策定

2008年11月25日 

デンマーク財務省は、10月15日、「改革プログラム2008」を発表した。
 この改革プログラムは、2005年に策定された改革プログラムの抜本的見直しではなく、2005年からの改革戦略の路線を延長するとともに、2006年から2007年にかけての進捗状況をチェックするためのものである。
 今現在の重要な課題としては金融の安定化施策があげられるものの、政府の優先順位としては、必要な経済構造改革を引き続き推し進めていくことが重要であるとしており、グローバル社会の利益を享受して、21世紀型の福祉国家モデルを実現することを掲げている。
 デンマークにおける失業率は昨年よりさらに低下し、2008年7月~8月には、1.6%の歴史的な低水準を達成した。企業の雇用は更に増加しており、他国との比較においても高い水準である。このため、デンマークでは労働力不足が生じており、労働市場の供給能力が縮小する中でさらに高い雇用水準を維持することが大きな課題である。
 このため、今回の改革プログラム2008の重点は、特に、雇用計画、病欠休暇へのアクションプラン、労働市場委員会、税務委員会等におかれている。

【出典】
デンマーク財務省ウェブサイト
http://uk.fm.dk/Publications/2008/1642-Denmarks%20National%20Reform%20Programme.aspx


都市のランキング評価結果について(コペンハーゲン)

2008年10月07日 

・コペンハーゲンは、イギリスのライフ・スタイル雑誌Monocleの、世界の住みやすい都市トップ25(Most Liveable Cities)の2008年ランキングで1位となった。
・2007年は第2位。
・なお、コペンハーゲンは、ベスト・デザイン・シティ(Best Design City)にも選ばれている。
・1位となった理由は、公共交通システム、食文化、建築デザイン、そして環境問題への取り組み等。
・コペンハーゲンでは、港湾の水質向上、2015年までに90%の市民が15分以内に公園・ビーチ・プール等へ徒歩で行けるようにすること、また、サイクリングロードの整備により同年までに50%の市民が自転車通勤できるようにするなど、環境に配慮した政策を展開している。また、2009年12月には、COP15が当地で開催されることとなっている。
・なお、日本の都市のランキングについては、3位に東京、17位に福岡、そして20位に京都がランクインし、また福岡はベスト・リテール・シティ(Best Retail City)にも選ばれた。

【出典】
デンマーク政府ウェブサイト
http://www.denmark.dk/en/servicemenu/News/FocusOn/Its-Official-Copenhagen-Is-The-Worlds-Most-Liveable-City.htm
Monocleウェブサイト
http://www.denmark.dk/NR/rdonlyres/60B9101D-B656-438E-A755-E441D41E0AA7/0/top_20_cities.pdf


デンマークの自治体再編について④

2008年07月07日 

・自治体再編により、2009年に行われる地方選挙以降、議員数も変化することとなる。
・市(コミューン)は、直接比例選挙により議員が選出されている。議員定数は各自治体が、国の定める範囲内にて定めている。
・2007年の自治体再編以前は、コペンハーゲン(定数55)を除き、各市の議員定数は9から31の間で定めることとされていた。
・全ての市が2万人以上の人口となることを目指す政府方針による再編によって、市の数は271から98となった。
・新たな議員定数の範囲は次のとおり。
  再編の対象となり、かつ人口2万人以上の市:25以上31以下
  再編の対象とならず、かつ人口2万人以上の市:19以上31以下
  再編の対象とならず、かつ人口2万人未満の市:9以上31以下(再編前と同じ。該当する自治体は7つのみ)
・この再編により市の議員の総数は4,597名から2,520名となる予定。
・県(リージョン)については、5つのリージョンが各41名の議員定数となり、計205名となる。もとのアムトの議員は全部で357名だった。
・市と県を合わせると、この自治体再編で2,229名の議員定数が削減されることになる。

【出典】
内務及び保健省「The local government reform– In brief」
http://www.im.dk/publikationer/government_reform_in_brief/index.htm


デンマークの地方自治体再編について③

2008年03月25日 

・新しく創設されたリージョンの財政は、コミューン(市)及び国からの財政移転によって賄われるため、県税は廃止された。
・以下、再編の前後におけるコミューン(市)の歳入について、説明する。
・再編前
 税(所得税、固定資産税、法人税の一部)56%
 諸収入21%
 償還(国からの社会福祉費等の償還)8%
 一般補助金13%
 債務1%
・再編後
 医療分野について、従来のアムト(県)からコミューン(市)への権限移譲が行なわれたため、歳入も移譲される(4%程度の増)。また、従来のアムト(県)分の固定資産税については既に全額のコミューンへの移譲が決定されており、従来のアムト(県)分の所得税についてもコミューンへの移譲が検討されており、各コミューンへの配分の行方や財政均衡のためのシステム作りに注目が集まっている。
【出典】
THE LOCAL GOVERNMENT REFORM-IN BRIEF(Ministry of the Interior and Health)他


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