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ADレポート「デュッセルドルフ市経済振興局、ジャパン・デスクにおける企業支援の取り組み」

2021年11月02日 

はじめに ジャパンデデスクとは?

ドイツ、デュッセルドルフ市(人口:61.93万人) に拠点を置く日本企業の数は405社、ノルトライン・ヴェストファーレン(以下、NRW) 州全体を含めると640社に上り、デュッセルドルフ都市圏は欧州大陸部で随一の日本企業集積地となっている。

 外国企業を含む圏外企業の誘致に積極的なデュッセルドルフ市経済振興局内には、日系企業支援を専門に行うジャパンデスクが設置されている。日系企業への立地情報の提供はもとより、許認可申請、滞在許可手続きの支援、各種ネットワークの紹介などの支援を日本語で提供している。

  日本においても、スタートアップはじめ外国企業の誘致活動を積極的に行っている自治体もあることから、同市の企業支援の取組みが参考になるのではないかと思い、ジャパンデスクに勤めるベンジャミン氏に詳しく伺った。

₋₋₋₋デュッセルドルフ市には日系企業が多いですね。

 そうですね。日系企業だけではなく、そもそも外国企業が多く、オランダ、中国などに続き、日本は3位くらいのシェアだと思います。

₋₋₋₋ジャパンデスクではどのようなことをしているのでしょうか。

 許認可申請、滞在許可手続きの支援のほか、オフィスや用地を探す企業があれば、不動産会社と連携し、現地を一緒に見に行く「Real Estate Tour(不動産ツアー)」を実施しています。ほかにも、会社設立後においても、市内の税金についての専門家、労働についての専門家、弁護士などのリストを提供しています。なお、パンデミック前は、東京で2年に1回、企業誘致セミナーを開催していました。
 企業を誘致して終わりではなく、その後も相談やネットワークづくりの提供など、支援を続けているのも特徴です。

₋₋₋₋企業はジャパンデスクに何でも相談できるのでしょうか?
 
はい。ただ、すべてジャパンデスクだけで対応できるわけではないので、その際には他部署(外国人局や建設局)や商工会議所の橋渡しをしています。また、デュッセルドルフ商工会議所内には、「Expat Service Desk」 があり、外国企業やその従業員、家族向けに、滞在許可、職業訓練、保育・学校教育、ドイツでの生活全般等について無料で相談できます。

₋₋₋₋日本では企業誘致補助金などがありますが、デュッセルドルフ市でもそのような助成制度はあるのでしょうか?

 助成制度はありません。その代わり、ジャパンデスクでのサポートは全て無料なので、企業はコンサルタントを雇う必要がありません。

₋₋₋₋州と連携した企業支援も実施されているのでしょうか?

 はい、州とも連携しています。NRW州貿易投資振興公社の日本法人(NRW.Global Business GmbH)が東京にあり、デュッセルドルフ市への進出に関する相談を東京窓口で受けた場合は、ジャパンデスクに連絡があります。そこから、先ほどお話した「Real Estate Tour(不動産ツアー)」の調整など支援が始まります。 また、毎年6月頃に、日本文化を紹介する日本デーがデュッセルドルフで開催されるのですが、州はじめ領事館、現地の日本企業とも連携しながら実施しています。

₋₋₋₋ちなみにベンジャミンさんは、ジャパンデスクにはどれぐらい在籍していらっしゃるのでしょうか?

 経済振興局には11年勤めていて、ジャパンデスクは9年ほど。企業への支援といった経済分野だけではなく、日本デーのような文化イベントに携わることができるので、とても魅力ある仕事だと思っています。

₋₋₋₋経済振興局には、ジャパンデスクだけではなく、他国のデスクもあるようですね。

 はい。ジャパンデスクのほか、欧州、アメリカ、ロシア、韓国、中国デスクがあり、市役所職員が各言語で外国企業の相談に対応しています。ロシア語が話せない職員もいますが、代わりに英語で対応しています。

₋₋₋₋皆さんスペシャリストですね。一方で、課題などありましたら教えてください。

 ジャパンデスクの課題というよりは、行政一般の話になりますが、ドイツでは、行政手続きのデジタル化があまり進んでいません。行政のデジタル化が進めば、書類手続き等の効率も上がると思うのですが・・・。

おわりに

 以上、デュッセルドルフ市のジャパンデスクの企業支援についてインタビューを行ったが、日本にも示唆を与える点があると思われた。 

 1点目は、関係機関(州・商工会・不動産会社・弁護士等)と連携し、市がコンシェルジュのような役割を果たしている点である。日本であれば、協議会を設立して、商工会、宅建協会、弁護士協会等をメンバーに含めながら連携を図ることが可能ではないだろうか。

 2点目は、受け入れ環境についてである。日本では、助成金による企業誘致をしている自治体もあるが、それだけでは外国企業が日本に進出する決定打にはならないと感じる。デュッセルドルフ市が、外国企業、また駐在員を受け入れるための環境整備(研究機関、学校、文化イベント等)に投資してきた点は今後の企業誘致・まちづくりの施策を検討する上で参考になるのではないだろうか。

<参考リンク>
・デュッセルドルフ市経済振興局ジャパンデスク
 https://www.duesseldorf.de/international/office-of-economic-development/jp.html

・図で見るノルトライン・ヴェストファーレン州経済(在デュッセルドルフ日本国総領事館)
 https://www.dus.emb-japan.go.jp/files/000375420.pdf

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