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調査・研究

スピーカーシリーズ

The Challenges and Issues around the Training and Development of the UK Local Government Workforce

2010年02月05日 

1 テーマ:「The Challenges and Issues around the Training and Development of the UK Local Government Workforce」
2 日時・会場:2009年11月27日(金)14:00~15:30 自治体国際化協会ロンドン事務所会議室
3 講師:Senior Fellow The Institute of Local Government Studies, University of Birmingham Ian Briggs様

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【英国の地方自治体職員の現況】
・どのように統計をとるかで数字は変わってくるが、英国全体の地方自治体の職員数は800,000人を超えている。英国の地方自治体職員は、「公務員」ではなく、それぞれの自治体ごとに他の民間企業に雇用されるのと同じかたちで雇用されている。つまり、当該自治体の議員が雇用主となっているのである。
・英国で最も大きい自治体の職員数は60,000人を超えており、最も小さな自治体の職員数は150人未満と、そこには大きな開きがある。また、自治体の規模によって、必要となる仕事の種類も当然のことながら異なってくる。英国の地方自治体職員の職種は1,000種類を超えるとされている。
・先ほど述べたとおり、自治体職員は一般の雇用契約と同じように雇用されることから、自治体にとっては人材及び労働力の自由競争市場が存在しており、個々人にとっては自由に、容易に転職ができる環境となっている。
・例外的に、特別な職務については被雇用者に特別な資格や能力を求める法的規制があるが、一般的には被雇用者の資格等に係る法的義務付けはほとんどない。
・以下に、地方自治体職員の構成について見ていきたい。第一に、多様な国籍の職員がいることがあげられる。職員の国籍は非常に多種多様だが、かならずしも英国全人口における構成比を反映したものとはなっていない。
・第二に、労働者の高齢化がある。現在の職員平均年齢は40代後半であるが、今後さらに高齢化は進むと思われ、また同じ自治体で働き続ける傾向が強くなっている。これにより今後は年金財政の問題が生じると見込まれている。
・第三に、全体の65%以上が女性であるということがある。1990年代以前は男性の方が多かったが、1990年代に職員男女比に大きな変化があった。職員全体の半分以上が女性であるにもかかわらず、幹部職員総数に占める女性職員数は40%未満となっている。
・第四に、職員全体の8%が黒人、アジア人等のマイノリティーである。私の大学があるバーミンガムなどはこの比率がより高くなっている。
・第五に、一般的に地方自治体職員の仕事に対する満足度は高く、統計をとると他の公共部門、例えばNHSなどで働く職員よりも満足度が高いという結果が得られる。

【英国の地方自治体における職員研修】
・2008年度において、地方自治体が職員研修のために支出した経費は職員一人当たりにして£273であった。2001年以来最も高額な数値となったが、2009年度の同経費は減少すると見ている者も少なくなく、そこには自治体全体の財政問題が大きく影響していると思われる。一方、地方議員も含めて一人当たりの研修費を算出すると、2003年度以来最も低い£218となる。費用の問題も含めて、どのような研修を地方議員に対して行うかということは自治体にとって大きな課題となっている。
・研修にどれだけの時間を費やしているかということに関しては、2008年度においては職員一人当たり1.4日の研修を実施したという結果が得られている。
・2008年度の平均離職率は11%となっており、2001年度に統計調査を開始して以来最小の数値となったが、数値自体は他の民間企業と同じレベルである。また、2009年3月31日時点での平均欠員率は10%となっている。
・職員給与について、大多数の自治体が勤続年数に応じた給与制度を適用しているが、近年はこの制度を利用する自治体数が大きく減少しており、能力給与制度を適用する自治体数が増えている。
・職員の経歴については、非マニュアル職(マニュアル職というのは、マクドナルドのように決まりきった仕事を繰り返す職種のこと)で働く職員の20%近くが大卒であり、その割合は増加傾向にある。また、新規採用職員の6人に1人が大卒である。
・職員全体の4分の1が社会福祉関連、財政、都市計画等の特別な資格を必要とする部署で働いている。昨今、コミッショニング(地方自治体が民間企業を利用して公共サービスを利用するために委託を行うこと)の自治体業務に占める割合が大きくなっていることから、コミッショニングに関する知識が今後ますます必要になってくると思われる。
・最近の傾向としては、専門知識をあまり必要としない職における大卒割合が増加していることや、同じ自治体内の他の業務分野への異動を希望する人が増えている。
・どのような研修を実施するかは、当該自治体の規模によるところが大きく、自治体ごとにいろいろな方法で研修を実施している。小さな自治体では、ほぼ全ての研修をアウトソーシングするケースが多い。これには利点と欠点があり、ニーズに柔軟に対応できる研修、新しい研修を実施しやすいというのが利点である。しかし、研修業務自体をまるまる外部に委託してしまうことで、自治体が職員研修の実態や、職員の状況について把握しにくくなるという欠点がある。
・一方、大きな自治体では他の自治体と共同で研修を実施する組織を立ち上げて職員研修を実施している例も見られる。こうした組織から私のバーミンガム大学にも研修の依頼が来ることがあり、例えば、バーミンガム大学の修士課程を自治体の係長(マネージャー)クラスの職員に受講させたい、という依頼等がある。

【Institute of Local Government Studies, University of Birminghamの概要】
・INLOGOVには500人を超える学生が所属しており、全て修士課程又は博士課程の学生である。
・公共部門のみにとらわれず、一般企業等の他の機関とも共同研究を実施するなどして複雑で幅広い研究を行っている。
・INLOGOVの学問的研究分野の核となるのは戦略的なレベルで地方自治をどうとらえるかという点にある。加えてINLOGOVでは多くの委託研究も行っており、こちらの研究テーマは多岐にわたる。具体例をあげれば、公における倫理問題について、効果的なパートナーシップはどうあるべきか等がある。昨今、重要なテーマとなっているのはコミッショニングである。これまでは地方自治体が直接住民にサービスを提供していたが、サービスの提供を民間企業が担うようになり、自治体の役割はサービス提供者の存在する市場全体を支援するという点に変わりつつある。このような背景があり、コミッショニングをテーマとした依頼が増えてきている。バーミンガム市は60,000人を超える職員を抱える規模の大きな自治体であるが、このバーミンガムにおいても予算の約10%はコミッショニング関連予算となっている。コミッショニングによって民間活力を導入することで、地域経済を活性化できるということも確認されており、この新しい動きは大変興味深いと感じている。

【自治体職員研修における今後の課題】
・自治体職員を採用する際の、自由競争市場はどこまで持続可能かという点がある。自治体職員のトップであるChief Executiveの給与が首相の給与を上回るほどの高額になっている事例も見られる。これは明らかに自由競争の結果の弊害である。
・また、時代に合った人材育成を実施するという点も見逃せない。先ほど話したコミッショニングは、これまで自治体が実施してきた単なる契約や調達とは異なり、その他の要素も求められる複雑な業務である。これらの業務を実施できる能力・資質をもった人材を育成するという点も、大きな課題である。

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