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CLAIRメールマガジン vol.291(2022年2月10日)=「ロンドンの公園~自然との共生~」

2022年02月10日 

ロンドンで暮らして1年以上になりますが、緑に溢れ、リスや鳥などの動物を観察できる公園が家の近くにあることが、どれだけ日々の生活を豊かにしてくれているかということを常々感じています。

ロンドンという大都会において公園は、友人、夫婦、恋人、また一人であっても自分たちの居場所を作れる場所です。ロンドンで暮らす人々にとって、公園は第2の家のようにくつろげる場所であり、芝生は絨毯のようなものなのではないかと感じてい ます。

ロックダウン時には息抜きのために公園で余暇を過ごす人が特に多かったのですが、筆者もその一人であり、公園に遊びに来ている人の姿やリスや鳥などを見ると穏やかな気持ちになれました。例え一人で公園に来ていても、他の家族や木々や動物に囲まれることで、コロナ禍のように孤独になりやすい状況でも、寂しさを忘れることができました。ロックダウンを切り抜けられたのは、公園のおかげだと思っています。公園がなければ、行先もなく、週末もずっと家にこもっていたことでしょう。

さて、ロンドンでは、2050年までに人口が現在の約900万人から1100万人以上に増加すると予測されています。人口が増加しても、全ての市民が自然を楽しむことができるよう、 公園を含むグリーンインフラの保全と拡大に政策的に取り組んでおり、2050 年までにロンドンの面積の半分以上を緑化することを目標としています。

グリーンインフラとは、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決(気候変動、生物多様性、心身の健康など)に活用しようとする考え方です。公園などのグリーンインフラが充実していることにより、ロンドン市民は運動不足を回避でき、年間5億8200万ポンド(約910億円)の医療コストなどが削減できていると推計されています。また、精神疾患についても同様で、年間3億7000万ポンド(約580億円)の削減につながっているとされています。このように、運動を促進する環境づくりは、社会コスト面においても大きな影響があります。

また、ロンドンの公園では、日常の都市生活においては忘れがちな、人間が植物や動物をはじめとする自然と共生しているという事実を再認識することができます。日常生活の中で、自然との共生を思い出させてくれる場所が身近にあることは、人々の環境への関心を高めるうえでも非常に重要です。

環境問題や人々の健康をはじめとする社会の様々な課題の解決に自然環境を活かそうとするグリーンインフラの考え方は、ロンドンという大都市のみならず、世界のあらゆる場所で必要なことではないでしょうか。

詳しくはこちらから。< https://www.jlgc.org.uk/jp/ad_report/parkinlondon/

※レート 1ポンド=156.5円(1月5日 OANDAによる)

                  ロンドン事務所 所長補佐 萩ノ脇

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