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CLAIRメールマガジンvol.214(2018年10月12日)=ロンドンにおけるフードロス削減の取り組み

2018年10月16日 

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ロンドンにおけるフードロス削減の取り組み
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9月2日~4日にかけて、ロンドンのオリンピアにてイギリス最大級のフード
フェア「SPECIALITY & FINE FOOD FAIR 2018」(※1)が開催され、ヨーロッパ
各国のほか、ブラジルや中国など世界中から700を超える出展者が集まり、大変
な賑わいを見せていました。一方で、こうした大規模なフードフェアでは大量の
フードロス(本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品)が出てしまう
恐れがあります。今回は、「SPECIALITY & FINE FOOD FAIR 2018」のパートナー
でもあり、ロンドンのフードロス削減に取り組むCity Harvest London(※2)に
ついてご紹介したいと思います。

政府や企業などと資源効率の改善に取り組んでいるWRAP (Waste and Resources
Action Programme) の報告(※3)によると、英国では年間1,000万トンもの食品
廃棄物が出ていますが、そのうち60%は避けることができたものとされています。
ロンドンでは何千人もの人々が飢えに直面していると言われる一方、多くのまだ
食べられる食品がごみとして処分されてしまっています。こうした事態に対し、
City Harvest Londonは、レストラン、食品スーパー、食品メーカー、ホテル、
ケータリング業者などから廃棄される前の安全で健康に良い食品を収集し、ホー
ムレスの避難所やアルコール依存症・麻薬中毒の支援施設、アフタースクールな
ど230もの組織に提供しています。その量は週に25トンにも上り、これまでに290
万食分が提要され、金額にすると370万ポンド分に相当するとのことです。

他にも、このサービスは、食品リサイクルによる有害ガスの排出削減や食品廃棄
コストの削減といった経済面や環境面にも利益をもたらします。しかし、本当に
重要なことは、品質の高い食事をすることで、飢えた人々が尊厳を取り戻し、困
難な時期を乗り越える力を得るようになるということ、健康面だけでなく精神面
にも良い影響を及ぼすことだと彼らは考えています。

(※1) https://www.specialityandfinefoodfairs.co.uk/
(※2) http://www.cityharvest.org.uk/
(※3) http://www.wrap.org.uk/sites/files/wrap/Estimates_%20in_the_UK_Jan17.pdf

ロンドン事務所 所長補佐 富田


CLAIRメールマガジンvol.212(2018年9月14日)=ウィンドラッシュ世代

2018年09月19日 

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【ロンドン事務所】ウィンドラッシュ世代
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「ウィンドラッシュ世代」とは、今では英連邦加盟国(Commonwealth of Nations)
となったジャマイカやカリブ海地域から英国に移住した移民やその子供たちを
指します。彼らは1948年から1970年代にかけて、第二次大戦後の英国の労働力
不足を補うため、英国政府によって招き入れられ、社会復興に貢献してきた人
々です。彼らが英国に旅立つために乗船したエンパイア・ウィンドラッシュ号
にちなみウィンドラッシュ世代と呼ばれるようになりました。

このウィンドラッシュ世代が、奇しくも彼らの初上陸から70周年にあたる今年、
英国のマスメディアで大きく取り上げられています。

事の発端は2014年の改正移民法で、政府による不法滞在者取締り強化の一環に
より、移民に対し国籍証明書や永住許可証などの正式書類の提出が求められた
ことから始まりました。というのも当時ウインドラッシュ世代の親と共に渡英
した子どもの多くは旅券やビザなど公的書類を持たずに入国したため、今とな
っては合法的に居住していることを証明するのが難しい状況にあります。

さらに今年になり、1971年制定の移民法により彼らが永住権を与えられた際の
記録を内務省が紛失するという政府の重大ミスが発覚しました。

改正移民法案により就労や社会保障の受給時に身分を証明する書類が必要にな
ったことで、ウィンドラッシュ世代は不法滞在の扱いを受け、中には強制退去
させられた人々もいます。

このことに対し、概ねマスコミは英国社会の発展に貢献してきたウィンドラッ
シュ世代を同情的に報じ、さらには国の責任を問われたアンバー・ラッド内務
大臣が辞任する顛末となりました。

移民の先駆けとなったウィンドラッシュ世代は、様々な人種差別に遭いながら
も今日の英国の繁栄に貢献してきた存在として広く認識されており、今回の不
当な扱いが人々の高い関心を集めています。

ロンドン事務所 所長補佐 山口


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