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ポリシー・トランスファー・プラットフォーム ~ 「都市のフェイスブック」

2016年12月28日 

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世界的な傾向として都市化が進行しているという事実は、政策面で多くの困難をもたらしている。多くの国の地方自治体間でこれまで以上にソリューションやベストプラクティスの共有が行われている一方で、都市部の地方自治体の職員はしばしば、都市に関する国際的なイニシアチブやプログラム、アウォード(賞)などの数の多さに当惑している。地方自治体の国際的な活動(姉妹都市提携や国際会議への出席など)の大半は、専門的知識やソリューションを最も必要とする現場の職員ではなく、首長や幹部職員を中心として行われているため、そうした活動から得られるベストプラクティス等に関する情報は、地方自治体の一般の職員に届かない場合がしばしばある。過去10年間、都市に関する国際的な団体や財団が数多く設置されていることも、地方自治体職員をさらに当惑させる理由の一つである(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの最近の調査によると、2016年時点でこうした団体や財団は200以上存在する)。

こうした状況を背景に立ち上げられたのが、世界の大都市及び大都市圏のネットワーク組織である「メトロポリス(Metropolis)」のプログラム「ポリシー・トランスファー・プラットフォーム(Policy Transfer Platform)」である。これは、2014年にベルリン都市州がメトロポリスの欧州事務局として立ち上げたプロジェクトであり、賞を受賞したものを始めとする都市の革新的なプロジェクトや政策のケーススタディをまとめ、ウェブサイトで誰でも閲覧できるようにしてあり、都市に関する専門的知識の「ワン・ストップ・ショップ」となることを目指している。ウェブサイトでは、都市名、分野、賞の名称等をキーワードとしてケーススタディを検索し、詳細を閲覧することができる。このウェブサイトを利用することで、過去10年間にその数が著しく増えた都市を対象とする賞をインターネットで検索し、それら賞のウェブサイトを一つ一つチェックするなどの手間を省くことができる。

ポリシー・トランスファー・プラットフォームの運営担当部署はベルリン市長室に置かれており、このプロジェクトを立ち上げた主な理由として、「都市に関する賞の乱立状態」と、都市を対象とする賞の地方自治体職員にとってのユーザビリティにばらつきがあること(様々な賞が存在し、実施頻度、応募条件、使用言語などがまちまちであること)の2つを挙げている。同プラットフォームのウェブサイトではまた、都市間ネットワークや都市行政の専門家がメンバーとして登録し、自身が関わっている都市プロジェクトのケーススタディをアップロードすることもできる。登録メンバーの多くは地方自治体の職員である。登録メンバーは、同サイトでプロフィールを公表し、ソーシャルメディアで行うのと同様、他の登録メンバーと交流することができる。ケーススタディ及び専門家のプロフィールの閲覧のみの利用に登録は必要ない。

Metropolis website

ポリシー・トランスファー・プラットフォームで紹介されているケーススタディの一例

このプロジェクトの立ち上げで中心的な役割を果たしたバーバラ・バーニンガー氏(ベルリン市長室国際関係部長でメトロポリスの欧州部門書記)によると、立ち上げ後、都市に関する賞と、それら賞を受賞した事例の両方についてウェブサイトで周知することによって、都市のネットワーク組織やそれら組織が実施している賞が既に行っている活動に付加価値を付けることができると分かったという。2014年の立ち上げ以降、同サイトは、メトロポリスのほか、欧州の大都市のネットワーク組織であるユーロシティーズ(Eurocities)などの団体が実施している賞、広州、ドバイ、シンガポールなどの都市が開催してるコンペティション、またドイツ銀行が実施するアーバン・エイジ賞(Urban Age Award)などの民間の賞を受賞した事例を追加している。バーニンガー氏は次のように話してくれた。

「このプラットフォームは、都市のイノベーションに直接関わる仕事をしている人と、都市の開発プロジェクトに関わるその他の専門家の両方に向けた学びと交流の場として作られました。登録メンバーの3分の1は、大都市などの地方自治体で働いています。3分の1は学者や研究者で、残りの3分の1は企業やNGO、市民グループの人々です」

同プラットフォームの運営者はまた、登録メンバーになるための手続きが簡単で、無料であることを強調している。その一方で、登録申請は全て、申請者の「本気さ」を審査し、サイトの信頼性を確保するよう努めているという。都市ネットワーク組織のメンバーであったり、メトロポリスのメンバーである130都市の職員であることは登録の条件ではない。

同プラットフォームは、ベルリン市長室国際関係部内の小規模なチームによって運営されている。このチームの職員の一人であるヨナス・ショア氏は、同プラットフォームの長所の一つとして、ケーススタディの掲載ページに、そのケーススタディをアップロードした登録メンバーに連絡できる機能が付いていることを挙げている。登録メンバーの多くは地方自治体職員であるため、それら事例に興味を持った人が、都市に関する賞の主催者ではなく、受賞した都市の職員に直接連絡できることになる(ただしこの機能を使って登録メンバーに連絡するには、自身も登録メンバーである必要がある)。ショア氏は次のように話していた。

「ケーススタディで取り上げられている分野について有益な情報を得たければ、それについて最も良く知っている人に聞くべきです」「賞の概要を読んでも、それらの分野で発生している問題や、地方自治体内での対立などに関する情報は分かりません。しかし、このサイトを見て都市に直接コンタクトすれば、賞の主催者が発表しない有益な情報を得ることができます」

また、ショア氏によると、ポリシー・トランスファー・プラットフォームのサイトを設計したベルリンの企業は、それまで公共団体や都市ネットワーク組織のための仕事を請け負ったことがなかったが、このサイトを手掛けたことがきっかけで、こうした分野のクライアントを獲得できるようなった。ショア氏は、同プラットフォームが、このような形で、ベルリンのテクノロジー産業を世界的に発展させるという同市の試みに寄与していると語っていた。

ポリシー・トランスファー・プラットフォームには、2016年時点でおよそ120のケーススタディが掲載されており、登録メンバーは80人に上る。2017年7月にはメトロポリスが同プラットフォームの今後について見直しを行うことになっており、運営者は、それまでにケーススタディと登録メンバーの数を増やしたい意向である。同プラットフォームはまた、2016年10月にエクアドルの首都キトで開催された第3回国連人間居住会議(ハビタット3)において、都市間での知識共有に関する会議の中で取り上げられた。

 

ポリシー・トランスファー・プラットフォームのウェブサイト
http://policytransfer.metropolis.org/

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