調査・研究

スウェーデンの地方自治情報メモ

スウェーデン

学校教育法の授業時間規定を廃止せよ

2009年08月01日 

 先頃、政府は、 諸点において学校教育における成果改善に寄与すると考えられる新しい学校教育法を提案した。
 しかし、この提案には、現在稟議中の法改正案に当然含まれるべき重要な改正事項が欠けている。このようにSKL地方自治体および州議会連合は論説コラムに述べている。
 新法の明白な欠陥は、国定授業時間基準が廃止されていないことである。私達は、各校のすべての生徒に、すべての科目についてまったく同一の授業時間を課する不合理を数年間に亘って指摘してきた。固定授業時間制の現実はまったく別で、例えば数学、スウェーデン語、体育などそれぞれの科目で、各生徒が定められた学校の目標を満たすために必要な時間はそれぞれ異なっている。適応性のある授業時間制を適用した広範な実験では、特に学習に追従困難であった生徒間で良好な結果を示している。
 また、柔軟な学業の開始時期についても同一の問題を抱えている。 柔軟な就学時期についての改正は、人よりも早く、または人よりも遅く就学、あるいは進級する必要のある生徒にとって効果的である。
 
 より柔軟性のある学校教育は、学習の困難な生徒、および学習の容易な生徒の双方に有益である。国が給食や水泳教育の様な詳細部分の管理を提案している一方、この様な大局的な問題を黙視することはどうにも理解できない。この様にスウェーデン地方自治体および州議会連合は述べている。
 新学校教育法における素晴らしい提案事項の一つは、校長が個々の生徒のニーズを早期に把握する義務を負うことである。加えて、各生徒は、校長の決定する措置に対して抗議する権利を有する点である。この点は、生徒の法的安全性を強化でき、より多くの生徒が学校の定める学習目標に到達するよう寄与できるので評価できる提案である。
 適正な学校教育法は必要であるが、すべての生徒が学習目標を達成できるよう発展させるだけでは不十分である。下記の幾つかの分野についても中心課題でなければばならない。

• 教師の資格・能力: 大部分の教師の資格・能力は良質であるが、社会の変化に対応した継続的な能力開発が必要である。一方では、教師の上級課程の補足教育および 資質・能力の向上、各学校の異なる必要性への配慮などに対する国家措置が必要である一方、専門科目の知識を深化すること、および系統的新人教師の養成が要求される。さらに、地方自治体は、教師の資質開発のための方策と教師間において相互に学習する気風の改善が必要である。
• 成果の優良な教師には充分な報酬を与えるべき:地方自治体への事業主機関としてSKLは、長期に亘り個別給与制問題を熟考してきた。教師の資格要件を基盤とした好結果は報償されるべきである。
• 教師の在校時間を延長:生徒の成績向上を図るには教師の在校時間を延長する必要がある。これは、授業時間、およびその他、生徒と共に学習活動する時間の双方であり、また、生徒が在校しない時間に同僚と共に自己の職務開発に宛てる時間である。
• 目標の明確化と定期的フォローアップ: 多くの場合、各地方自治体は、生徒が目標を継続的、確実に達成できるよう適切な手段を企画することが出来る。国による学校教育審査と頻繁な国家試験は、これらに加えて有功である。
• 学校教育に密着した研究:国は、学校教育の目標達成に関連した研究向け補助金を増加する必要がある。例えば、数学の成績向上のための方策、および他国から新たに移入してきた生徒への方策など具体策が必要である。この点についても、研究者、地方自治体、および各学校は有益な協調体制を確立できる。

 スウェーデンの学校は多くの良い成果を挙げているが、一方では各種の問題を抱えている。前述した各種の対応策と相俟って、これらの各種問題に対して柔軟な解決策を容認する学校教育法は、より一層学校教育における成果向上を指向するための第一歩である。

【出典】
スウェーデンの地方自治体協議会(Swedish Association of Local Authorities and Regions:SALAR)のニューズレター(2009年9月1日発行)
http://www.skl.se/artikel.asp?C=1955&A=61768

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