2016年度日英交流セミナー 「International Strategies for Places」

国際交流

2016年度実施事業 ロンドンpdf

2016年度日英交流セミナー 「International Strategies for Places」

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日時: 2017年3月3日(金)14:30~17:30(レセプション実施17:30~19:00)
場所: Church House (Dean’s Yard, Westminster SW1P 3NZ)
参加者: 計65名
名ゲストスピーカー(司会含む)9名、来客数(招待含む)47名、スタッフ9名

概要及び次第:
JLGCセミナーは、主に英国自治体関係者の方に、日本の自治体活動に関する関心を高めていただき、両国の地方自治体の成功事例を共有することを目的とし、年次で実施している。

今年度は、EU離脱及びビジネスレートの地方自治体への移管を目前に控え、英国の各自治体独自の地域活性策が求められ始めていることを背景に、「International Strategy for Places」と題し、日英地方自治体の地域活性化事例の紹介を行った。

司会には、Fujisankei Communications International Inc.のスー・ハドソン氏を迎え、9人の登壇者による報告や紹介、Q&Aセッション、ネットワーキングセッションを行った。それぞれのスピーカーの報告の要旨は以下のとおりである。

なお、今回はSNSをより積極的に活用し、Periscope(アプリケーション)によるセミナーのオンライン中継、及び来場者にツイートの呼びかけを行った。

①  Mr. Kazuya Shima (Director of the Japan Local Government Centre)

(一財)自治体国際化協会の概要紹介

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②  Mr. Jotaro Horiuchi (Minister, Embassy of Japan)

開会挨拶(Opening Remarks)

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・海外から日本への観光客は増加傾向にあるが、英国からも増加しており、2016年には約293,000人が訪日している。

・在英日本国大使館においても、JNTOや日本の地方自治体と協力し、観光プロモーションイベントを実施している。2019年のラグビーワールドカップ開催に向けた誘客イベントを今年(2017年)に実施予定。

・一方で、日本からの訪英客はやや減少しており、訪英客の増加のため英政府観光局と協力し両国の観光促進を行っている。

・また、在英日本国大使館は、英国内の様々な機関と協力し、日本から英国への投資促進にも尽力している。この投資により最大約14万人の雇用が見込まれる。

③   Mr. Daisaku Yukita (Deputy Director General, JETRO London)

Japanese local authorities’ activities in the UK/Europepdf

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・日本の地方をそれぞれGDPで比較すると、実は欧州各国と遜色のない経済規模である。

・各地方のニッチ市場会社が世界市場で大きなシェアを占めていることを紹介

・他の中小企業の中にも世界市場に打ち出せる高い可能性を持つ企業も多いが、海外とのコネクションのないところが多い。

・2014年から打ち出された政府の地域活性化施策のうち、特区制度を利用し海外展開のきっかけにする地方もある。例えば、国家戦略特区に指定されている福岡市では、外国人起業家の支援としてビザの発給支援やそのほかのインセンティブを提供している。

・JETROの核は海外の企業と日本の地方自治体を含む地方とのマッチングサービスであるので、日本でのビジネスを検討されている場合は、ぜひ始めにJETROにご相談いただきたい。

④  Mr. Martin Phelan (International Director, Northern Powerhouse – Investment DIT(英投資貿易省))

Attracting FDI into the UK: Collaboration between LEPs, central and local governmentpdf

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・英投資貿易省の役割の一つは、英国内各地に存在する地域産業パートナーシップ(Local Enterprise Partnership, 地域の経済開発の促進を目的とした地方自治体と民間企業のパートナーシップ)と協力し、海外からの直接投資を地域に誘致することである。

・LEPや地域によっては、直接に海外と連携を持っているところもある(例:中国の市との経済連携協定など)

・海外からの投資における国と地方のパイプラインとして、投資貿易省国際部門は「英国に利益をもたらす」ために、海外の特定の企業や地域との戦略的な連携を推進している。

⑤  Mr. Takashi Yanagisawa (Chief Representative, City of Yokohama Frankfurt Representative Office)

Yokohama’s International Strategy: Symbiotic Growth with the International Communitypdf

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・横浜市は、これまでもTICAD、APECなど主要な国際会議を招致・開催しているが、昨年(2016年)に、2020年に向けた新たな国際戦略を策定した。これは、国際的な場への積極的な参加や、これまでに培った都市間交流やネットワークを活かして、国際的なプレゼンスを一層高め、観光、MICE、スポーツイベントなどの招致や、横浜市への海外からの投資を高めることなどを企図するものである。

・フランクフルト事務所では、こうした国際戦略の最前線として、ドイツ等欧州における市の観光・ビジネスプロモーションや都市間交流を行っている。特に横浜に投資誘致するビジネスについては、医療機器メーカーから語学学校まで、分野は多岐にわたる。

・また、次世代の育成のために、姉妹都市間の学校交流を行っている。

・「世界とともに成長する横浜」であることが、市民の国際的な相互理解に欠かせない。

⑥  Mr. Jeff Cao (Head of Asia Pacific, London and Partners)

Japanese FDI: Why London remains a great place to investpdf

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・ロンドンへの海外からの投資において、日本はトップ5、旅行客についてはトップ7である。

・2011年から2016年における日本からの直接投資の分野別内訳としては、飲食業が最も高い21%で、日本食人気に支えられている。

・英国のEU離脱投票後、日本からの投資は上昇しており、それは離脱後に備えた行動ととらえられる。実際、英国のGDP成長率にはEU離脱投票の影響は見られない。

・EU離脱後も、ロンドンは金融及びテクノロジーの主要都市であり続けることが見込まれる。G20の中でも税率が低く、2020年に向けてさらに税率を引き下げる方針にある。

・今後英国・ロンドンと日本とのさらなる連携が期待される。

⑦  Mr. Richard McGuckin (Director of Economic Growth & Development, Stockton-on-Tees Borough Council)

Stockton’s International Strategypdf

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・ストックトン・オン・ティーズはイングランド北東部に位置する、人口20万人弱の自治体で、ロンドンから電車で約2時間20分、ヨークからは30分弱の場所に位置する。ティーズ川が重要な資産であり、流域(Tees Valley)には工場やロジスティック拠点が所在し、地域産業パートナーシップ(Local Enterprise Partnership)としてTees Valley Unlimitedを形成している。

・発展する都市として、自治体としても積極的な投資や文化・スポーツイベントを実施している。例えば、自治体の100%出資によるヒルトンホテルの新設(約£1700万)や、レジャー施設の新設(約£1100万)などである。

・ニフコ、富士フィルム及びLucite International(三菱レーヨン)の工場も所在し、3社ですでに1400人の雇用があり、富士フィルムは雇用拡大の計画がある。自治体としても日本及び日本企業との関係強化を重視している。

⑧  Mr. Kiyokata Kume (Deputy Director, East Japan Railway Company London Office)

Thriving with Communities, Growing Globally

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・東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、東京を含む東日本の鉄道網を運営する、日本最大の鉄道会社である。

・収益のうち32%は駅構内の店舗経営やオフィス・ホテル経営等、鉄道外のビジネスによるもので、社内では「ライフスタイル・ビジネス」と位置付けており、これは日本の社会変化(少子高齢化、ITの発展、価値観の多様化)に対応し、人々のライフスタイルに一歩進んだ提案を行っていくものである。

・国際展開としては、技術コンサルタントを行う会社を設立しているほか、海外マーケティング及びビジネス展開のため、ロンドンを含め世界に5か所事務所を設けている。英国では、ハイスピードレール(HS2)への技術アドバイスも行っている。

・日本国内の地域や市とも協力を行っており、例えば東北大震災の影響を受けた地域への観光プロモーションや、新たに新幹線が敷設されたばかりである北陸地方との協力があげられる。地域経済の活性化にも貢献している。

⑨  Mr. Rob Gorton (Cooperate Planning Manager, Toyota UK)

Toyota in the UK: Partnership and Competitivenesspdf

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(ロブ・ゴートン氏は元JETとして熊本県で英語教師の経験がある。)

・トヨタは英国内に2つの工場を構えており、併せて25億ポンドの直接投資、3000人の雇用、20億ポンドの輸出益をもたらしている。日本も輸出先の一つである。

・経済的な利益だけでなく、会社を通じ新たな英国人スタッフや次世代の若者が日本の技術を習得できている。また、地域でのボランティア活動(環境保全活動)や寄付(救急対応車の寄付等)などで、地域貢献も果たしている。

・トヨタの英国での成功は、海外からの直接投資への政府の積極的な支援と、単一市場にアクセスできること、および地方自治体からの手厚いサポートによるものと考えられる。今後も日本の投資を誘致するためには、政府・地方自治体が、ビジネスにおいて信用が大切であることを理解し、長期的な関係の構築に尽力する必要があると考える。

⑩  質疑応答

〇 高齢者への配慮など、高齢者向けのサービス提供について、どういった考慮をされているか?

⇒(Mr. Kume, East Japan Railway Company)
日本では高齢化が進んでおり、高齢者や体の不自由な方もアクセスのしやすい施設づくりを行っている。また、高齢者向けのディスカウントチケットの提供も主なっている。

⇒(Mr. Yukita, JETRO)
高齢者向けサービスは、大きなビジネスチャンスでもある。例えば、若者より時間のある高齢者のほうが、長期的な旅行を行いやすい。

〇 製造業等誘致における英国の強みは何か?

⇒(Mr. Gorton, East Japan Railway Company)
高等教育機関や製造開発など、英国の強みを明確にすることと考える。

⇒(Mr. McGuckin, Stockton-on-Tees Borough Council)
地方自治体の視点から、投資誘致において重要なのは、より自由でフレキシブルであり、企業にとって魅力ある地域とすることである。

〇 企業の地方自治体との協業例(地域産品の展開など)について

⇒(Mr. Kume, East Japan Railway Company)
地域の地ビールなど、地域の特産品の店舗販売などを試験的に行っている。こうした特産品(農業製品や工業製品)の情報については、地方自治体の協力を得ている。

〇 地方自治体が地域を海外に売り込むために、どういった差別化を行っているか?また、MICE等の誘致成功のカギは何か?

⇒(Mr. Yanagisawa, City of Yokohama)
ブランド戦略、市のイメージ作りを行っている。例えば、横浜は東京に隣接しているが、東京にはない中華街など、歴史的に国際都市であることを強調し差別化を図っている。MICE等の誘致については、過去の実績を強調することが成功につながっている。