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CLAIRメールマガジン vol.174(2017年3月17日)=英国における宿泊税導入の可能性

2017年03月20日 

【記事】英国における宿泊税導入の可能性
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先日、ロンドン市長の諮問に応えてロンドン財政委員会が提出した、英国政府
からロンドンへ移譲されるべき権限のパッケージを示した報告書の中で、所得
税や付加価値税にかかる権限と並んで、宿泊税についても言及がありました。
この報告書は、Brexit後もロンドンが国際的な都市として繁栄していくために
は何が必要かという観点からまとめられたものです。

英語ではTourist taxやAccommodation tax、City tax、日本語では観光税や宿
泊税などと呼ばれるこの種の税金は、宿泊費に課される付加価値税とは別に、ホテ
ルなどに宿泊した際、宿泊日数に応じて課されるものです。ヨーロッパでは、
近年、パリやベルリン、ローマ、アムステルダムなどの各国首都、また、ドレ
スデン(ドイツ)、ザルツブルク(オーストリア)、ミラノ(イタリア)など
の地方都市でも導入されています。

ロンドンの年間観光客数は約2,880万人(2014年)で、多数の観光客は様々な経
済効果や社会効果をもたらす一方、市内の交通や清掃、警備などに追加コストを
生じさせています。報告書では、一泊あたり2.5ポンド(約350円)の宿泊税を
導入した場合、その税収は年間1億2百万ポンド(約143億円)にのぼるという試
算と、それらを無料で楽しめる施設やイベントにも充てることで、より一層ロン
ドンの観光振興を図るという考えを紹介しています。

報道によると、世界遺産の街であるバースや、スコットランド第二の都市であ
るグラスゴーも宿泊税には関心を示していますが、英国ではまだ導入例はあり
ません。導入されていない背景には、英国では地方自治体に独自に税を創設す
る権限がないという制度的な課題や、高い付加価値税率、観光客の意欲減退な
どを理由に反発する経済団体やホテル業界の存在などがあります。ヨーロッパ
では導入が進む宿泊税ですが、英国では導入されるのかどうか、今後の動向に
注目です。

                   (ロンドン事務所所長補佐 高坂)

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