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CLAIRメールマガジン vol.145(2016年6月17日)=~ ナショナル・ギャラリーのストライキ ~

2016年07月13日 

ナショナル・ギャラリーのストライキ

【記事】ナショナル・ギャラリーのストライキ
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「ロンドン」で思いつくものは、ウェストミンスター寺院、ミュージカルから
サッカーまで様々かと思いますが、世界有数の規模、質を誇る博物館・美術館
も、誰もが納得するものの一つかと思います。しかも、物価の高いロンドンに
あって、大英博物館などの主要なミュージアムの多くが無料です。

クレアロンドン事務所の近く、トラファルガー広場にあるナショナル・ギャラ
リーもその一つで、年間600万人以上の来館者を迎えています。13世紀から19世
紀の西洋絵画を所蔵しており、印象派など、日本人に人気のある画家の作品も
数多く展示されています。

そのナショナル・ギャラリーで、昨年長期のストライキが敢行されました。こ
れは、来館者対応やセキュリティ業務を、新たに提携する民間会社に移転させ
る計画に反対するものでした。同館は英国政府の下部機関にあたり、直接雇用
の職員は政府機関の職員と言えます。

ストライキは2015年初めから断続的に実施されていましたが、8月半ばからは無
期限ストライキに入りました。開館はしているものの約半数の展示室は閉鎖、
連日行われるギャラリーツアー等もキャンセルとなり、100日以上のストライキ
の末10月にやっと通常開館となりました。業務の民間会社移転は受け入れ、解
雇された組合職員の雇用は回復すること等により合意をみたようです。これに
より、前年の夏期と比べ来館者は35%減少したとされています。

政府の財政削減により、美術館・博物館予算も削減の方向にあり、各館とも
ショップの充実や優れた有料展の実施など、様々な自助努力が求められる状況
にあるようです。

19世紀前半、同館開設にあたりトラファルガー広場が選ばれたのは、階級に関
わらず通える場所であったため、すべての人が絵画を楽しみ、学ぶためとのこ
とです。現在も同館の理念は「所蔵作品は英国民に帰属するもの」として、様
々な人に公開され、また将来の世代に向けて守っていくものとされています。
大げさかもしれませんが、厳しい環境の中、同館にはその高い理念を続け、世
界中の博物館・美術館のお手本であってほしいと思っています。

                   (ロンドン事務所 濱田所長補佐)

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