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CLAIRメールマガジン vol.252(2020年6月12日)=英国の観光業界を盛り上げる取り組み

2020年06月12日 

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【ロンドン事務所】英国の観光業界を盛り上げる取り組み
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観光業は、英国の主要な産業の一つです。英国政府観光庁によると、観光業は2025年に
は257億ポンド(約3.5兆円)の規模に達し、380万人の雇用を創出すると予想されています。
これは、英国のGDPの10%弱を占め、全雇用の約11%を占める規模です。また、大手会計事
務所によれば英国の観光業のGVA乗数(Gross Value Added multiplier、粗付加価値額乗数)
は2.8と試算されており、これは1,000ポンドの付加価値が直接的に生み出されると、間接
的に1,800ポンドの付加価値が生み出されることを示しています。

しかし、今年は新型コロナウイルスの影響によりヨーロッパ各国と同様にイギリスの観
光業も大きな打撃を受ける見通しです。このような中で英国政府は4月7日にイングラン
ド内に約150あるDMO(Destination Management Organisation、観光物件、自然、食、
芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域
作りを行う法人 )のうち、商業収入が全収入の5割以上を占め、存続危機にある団体に対
して総額130万ポンド(約1億7,560万円)の財政支援を実施することを発表しました。

新型コロナウイルスの影響が最終的にどの程度になるかはまだわかりませんが、英国では
観光業は重要な産業であることには変わりありません。今回は新型コロナウイルス流行下で
も実施されている数少ない観光プロモーションの一つである、Visit England主催の
Tourism Superstar Competitionについてご紹介したいと思います。

これは観光業に携わる人の中から仕事への貢献度や職務に懸ける情熱において特筆すべき
ものがある人を表彰するイベントです。毎年、推薦形式によって候補者がノミネートされ、
地域のDMO等から成る委員会で10名のファイナリストを絞った後にインターネット上で一般
投票を行い、その年の受賞者を決定します。このイベントはオンライン上で行われるため、
新型コロナウイルスの影響を受けず、今年も開催されています。
若干、手前味噌といった感じもするイベントですが、観光業に携わる人のモチベーション
の向上や、個別では訴求力の弱いコンテンツを組み合わせてインターネットを用いて広く注
目を集めるように努めている等、限られた予算の中でも工夫して運営されています。この手
法は、観光業のみならず、特に限られた予算の中で運営しなければならない日本の地方自治
体の地域活性化の一つの手法としてヒントになるのではないでしょうか。

ロンドン事務所所長補佐 野坂

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