近年、英国では、移民制度の規制強化が強力に推進されています。
移民制度の規制強化の動きは、2023年12月に、当時の保守党政権が、移民数を大幅に削減し移民制度の悪用を抑制するための計画を発表したことに端を発します。この計画の目的は、企業に対し、海外の安価な労働力への依存をやめ国内労働力への投資を促すことや、NHS(国民保険サービス)のような公共サービスを維持するために移民に相応の負担をさせることにありました。
その後、2024年7月に労働党へ政権交代した後も、移民制度の見直しは継続的に推進されています。2025年5月には、移民制度の規制強化に関する白書「Restoring Control over the Immigration System」が公表され、Keir Starmer(キア・スターマー)首相は、英国社会における移民の貢献と必要性を認めながらも、移民制度の見直しの必要性について改めて強調しました。
白書では、労働制度や留学制度の見直し、移民制度における規制の厳格化などに焦点が置かれており、外国人労働者が取得する主要なVISAであるSkilled Worker visas取得のための所得や学位、英語力に関する要件の引き上げや、英国の大学を卒業した外国人留学生が、卒業後に就職活動などを行うために取得できる卒業VISAの滞在可能期間の短縮のほか、外国人の労働者や留学生の被扶養家族としてVISAを取得する場合の英語要件の新設などの方針が示されました。
この一連の見直しに対する英国内の反応はさまざまで、必ずしも歓迎する声だけではありません。
社会福祉の分野では、Skilled Worker visasの取得要件が厳しくなることで、国外からケアワーカーの採用ができなくなり、深刻な人材不足につながることが懸念されており、社会福祉分野に特化したメディア「Community Care」の行った社会福祉分野の専門職2,900人を対象とした世論調査によると、71%がこの懸念に同意しています。
また、高等教育分野に関しては、英国の主要な全国紙「Guardian」のウェブ記事では、政府が検討している卒業生VISAの滞在期間を現行の2年から18カ月に短縮する案について、外国人留学生にとって英国の留学先や就職先としての魅力を損なう恐れがあると指摘されています。
このように、政府主導で強力に推進されている移民制度の規制強化については、英国内の意見は一様ではなく、今後の展開を注視していきたいと思います。
(ロンドン事務所 所長補佐 粟田)
【参考文献】
< https://www.gov.uk/government/news/home-secretary-unveils-plan-to-cut-net-migration >
< https://www.gov.uk/government/publications/restoring-control-over-the-immigration-system-white-paper >
< https://www.gov.uk/graduate-visa >
< https://www.communitycare.co.uk/2025/05/29/ending-international-recruitment-care-workers-readers-take/ >
< https://www.communitycare.co.uk/about-us/ >
< https://www.theguardian.com/uk-news/2025/may/12/businesses-starmer-immigration-crackdown-social-care >
< https://www.theguardian.com/about >
