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CLAIRメールマガジン vol.339(2024年3月8日)=なぜロンドンの街並みに電柱はないのか

2024年03月08日 

 私はロンドンに赴任した時から、なぜロンドンの街なかには電柱がないのかずっと疑問に思っていました。日本では街なかを歩けばどこにでもある電柱ですが、ロンドンで見かけることはまずありません。国土交通省の公表データによれば、ロンドンの無電柱化率は100%となっており、ロンドン以外の世界の都市でもパリやシンガポールは同様に100%、アジアの台北、ソウルに関してはそれぞれ96%、50%となっています。その一方で、日本は無電柱化が進んでおらず、日本の中で一番進んでいる東京23区でも8%にとどまります。
 なぜ普及率がここまで異なるのか、ロンドンと日本で比較してみましょう。ロンドンは、電気が普及し始めた当時、電柱を設置するための路上スペースの確保が困難でした。また、既に普及していたガス灯が地中化されており、電灯の施工には地中化または電柱設置の方法がありましたが、地中化には大きなコストがかかってしまいます。ガス業界と電気業界の条件を公平にするためにガス・電気いずれも地中化に統一されたため、電柱が立つことはありませんでした。当初の目的とは異なりますが、結果的にロンドンではこの無電柱化により良好な景観が保たれることになります。一方、日本では戦後の復旧時に安価で速やかに、国土全体に電気を供給することを優先した結果、電柱が普及したのです。
 近年では、地震により倒れた電柱が救助の妨げになったり、景観保護の観点などから東京をはじめとした日本国内でも無電柱化の動きがみられます。しかしながら、既に道路の下が水道管やガス管でいっぱいで配線するスペースがないことや、工事にかかるコスト面の問題から思うように進んでいないのが現状です。
 ロンドンに赴任するまで、電柱はごく当たり前にあるもので意識もしていませんでしたが、今では電柱の立っていた街並みを少し懐かしく思います。電柱のある街並みも日本らしいといえるのかもしれませんが、何より日本は災害の多い国です。課題は少なくありませんが、災害に備えて少しずつでも無電柱化が進むことを期待しています。

ロンドン事務所 所長補佐 佐々木

【参考サイト】
〇国道交通省 無電化の整備状況(国内、海外)
https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_13_01.html
〇地中化工法と整備手法の選定ポイント(案)第1.0版(2019.06)
https://scenic.ceri.go.jp/pdf_manual/chichuka/chichuka201906_01.pdf
〇読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231202-OYT1T50128/
〇無電柱化の現状 国土交通省 平成29年1月26日
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/chicyuka/pdf03/09.pdf
〇国内外のまちづくり 海外の無電柱化事情について
https://www.georhizome.com/archives/blog/2540
〇NHK NEWSWEB 東京の無電柱化について
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220310/k10013519651000.html

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