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英国

チャリティ活動への意識が芽生えるクリスマスカード

2020年12月14日 

日本にいる家族にクリスマスカードを送った。表にはチャリティカードと書かれており、購入した百貨店から2つのチャリティ団体へ20万ポンドが寄付されるようである。家族に送って喜んでもらえるだけでなく、チャリティ活動にも貢献できるのは嬉しい。街では他にも様々なチャリティ団体への寄付に充てられるクリスマスカードを見かける。果たして英国のチャリティ団体がどのような活動を行っているのか気になり、調べてみた。

 

 

 

 

 

 

チャリティ団体数は168,033団体

統計調査のデータを提供するドイツの企業スタティスタによれば、イングランドとウェールズで168,033(2020年3月時点)のチャリティ団体が活動しているようである。

英国ではどのようにチャリティ活動に参加しているか

2019年の英世論調査会社ユーガブの調査によれば、87%の大人がチャリティ活動に参加している。「昨年、どのような方法でチャリティ活動に参加しましたか」という質問に対し、上位3つの回答は、募金(57%)、物を寄付する(56%)、署名活動に参加する(49%)であった。また、募金している人の3分の1は、3団体以上に募金している。募金の対象は、健康と医学が32%と1番多いものの、動物を対象とした募金も27%と高い。また、年齢別での調査では、16歳から24歳の若者は、貯金が多くないことから、署名活動、環境に配慮して作られた物を購入する、ボランティアに関わるといった方法によりチャリティ活動に参加しているという結果が出ている。

注目された上位2つのチャリティ活動は

ユーガブが、独自の6つの指標(「印象」「質」「価値」「満足度」「推薦度」「評判」)でチャリティ団体を評価したところ(2020年10月に結果発表)、前回と比較し最もランキングが上がった団体は、ファッションがもたらす環境への負荷を訴え、新品の服ではなく、古着を買うことを推奨した活動‘#SecondhandSeptember’を行ったOxfamであった。この活動の背景には、毎週1,300万着の洋服が英国の埋め立て地に捨てられているという深刻な課題がある。また、1着のTシャツとジーンズ1本作るのに、13年分もの飲料水(1人分)が必要とされ、環境への負荷が大きいことを訴えている。なお、古着を扱うチャリティショップは街には数多くあるが、Oxfamが街中に置くチャリティショップで購入した場合は、古着の売り上げをさらに貧困問題の解決へと役立てている。

 

 

 

 

 

 

 

 

(↑Oxfamが運営するチャリティショップ 古本屋)

僅差で2位に浮上したのは、コロナ禍でペットを飼う人が増えた中、動物虐待防止の啓発にさらに力を入れた王立動物虐待防止協会( the Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals )である。設立は1824年と歴史が長く、1840年にビクトリア女王が後援したことから、「王立」を冠する団体名を名乗ることを認可されたという背景を持つ。365日24時間、動物を虐待、ネグレクト、怪我から救出している。昨年は、協会の捜査官が93,362件の動物虐待の苦情を調査し、1,425件に有罪判決が出ている。また、10~18歳の学童の約4分の1が、ソーシャルメディア上で動物の虐待やネグレクトを目撃しているという衝撃的な事実を受け、子供や若者の中にある動物に対する優しさと思いやりの価値観を育て、引き伸ばすことを目的としたプロジェクト「Generation Kind」(親切な世代)を2018年10月に立ち上げている。

所感

チャリティ団体の活動の内容を知ると、これまでの生活の中ですでに見てきた光景の中にあったものだと感じた。スーパーに行く際に、段ボール箱を抱えて、チャリティショップに入っていく人を見たことがある。また、公園では、リードを外された犬が生き生きと駆け回り(見知らぬ人に襲い掛かるのは見たことがない)、前を行くアヒルを優しい視線で見守り歩くカップル、リスやハトに餌づけする人たちを見てきた。

つい先日、ラグビーチームの監督であるKevin Sinfield氏 が7日間毎日フルマラソンを完走するという驚くべき挑戦を成し遂げたというニュースを見た。彼は、チームメイトが昨年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などを含む運動ニューロン病と診断されたことを受け、難病であるこの病に対する認知度を高めることと、研究費用の寄付を目的に走った。そして、目標金額であった£777,777(約1億811万円)をはるかに超える£100万超(約1億3,900万円)の寄付を達成した。

個人の力を最大限に振り絞り、社会を巻き込み、身近な難題を解決しようとするKevin Sinfield氏の行動力から感じたことは、方法は異なっていても、長い歴史を持つ英国のチャリティ活動に携わる一人一人も、このような熱い想いで取り組んでいるのではないかということだ。帰国までに、英国のチャリティ活動に携わり、英国の人々の意気込みや価値観に触れたいと考えている。

(所長補佐 萩ノ脇 2020.12)

 

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