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調査・研究

地方自治体等訪問

マンチェスター市で開催されたパートナーシップと地域開発に関するOECD LEEDフォーラムの年次総会に出席しました

2015年07月15日 

2015年6月24~26日、英国マンチェスター市で開催されたパートナーシップと地域開発に関するOECD LEEDフォーラムの第11回年次総会に出席しました。今年の会議のテーマは、「よりインクルーシブな経済成長のための地域のリーダーシップ」でした。会議は、ビクトリア朝の建築様式が美しいマンチェスター市の市庁舎で開催されました。

LEEDは、経済協力開発機構(OECD)による地域経済雇用開発プログラムであり(LEEDはLocal Economic and Employment Developmentの略)、「より多くの、より質の高い雇用の創出」について政府や地域にアドバイスすることを目的として、1982年に立ち上げられました。1980年代は、イングランドで大規模な地方自治体再編が行われた時期であり、また、マンチェスター市を含むイングランド北西部にとっては、工業・製造業の衰退で多くの雇用が失われ、市民が地域に対して抱くプライドも失われてしまった時期でした。しかし、そうした衰退の歴史を乗り越え、マンチェスターは近年、目覚ましい経済復興を遂げており、イングランド北部の主要都市としての地位を取り戻しています。

日本とマンチェスター市とのつながりとしては、日本政府が2008年、在マンチェスター名誉領事を新設していることがあります。現在まで、イングランドの都市で日本の名誉領事が設置されているのはマンチェスター市のみです。また、今回の会議の期間中には、マンチェスターの目覚ましい経済成長を予測し、日本にも言及した報告書が発表されました。調査会社オックスフォード・エコノミクスが2016年にリバプール市で開催される国際ビジネスフェスティバルのために策定した報告書は、経済復興に沸くマンチェスター市の今後5年間の雇用増加率は3.8%に上り、「東京やパリ、ベルリンをしのぐ」と予測しました。この報告書は、マンチェスター市では特に知識産業で雇用が伸びると予測しています。同じ日に今回の会議で発表されたOECDの報告書「地域経済のリーダーシップ(Local Economic Leadership)」では、マンチェスター市の経済行政が、アムステルダムやハンブルグ、ストックホルムなどの世界の都市と比較されていました。

今回の会議では、ワークショップも数多く開催されました。私たちは、そのうちの一つに参加し、マンチェスター市の「スポーツ地区」である「スポートシティ(Sportcity)」と、サッカーチームのマンチェスター・シティが所有・運営する「エティハド・キャンパス(Etihad Campus)」を訪問したことで、マンチェスター市と日本のさらなるつながりに触れることができました。訪問先には、マンチェスター・シティの最新のトレーニング施設のみならず、同チームの本拠地であるシティ・オブ・マンチェスター・スタジアムや、「シティ・フットボール・グループ(City Football Group)」の本部が位置していましたが、「シティ・フットボール・グループ」は、マンチェスター・シティの所有者で、かつ、日本のサッカーチームの横浜マリノスの株も所有しています(なお、シティ・オブ・マンチェスター・スタジアムは、2015年のラグビー・ワールドカップの会場の一つであり、また、横浜マリノスの本拠地である日産スタジアムは、2019年のラグビー・ワールドカップ及び2020年の東京オリンピックの会場として使われることが決まっています)。

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マンチェスターの科学及び工業分野での遺産や、サッカーなど世界的に知られたスポーツ界への貢献、また政治や経済面での画期的な試みは日本人にとって非常に興味深いものです。しかし、今回の会議で、JLGCにとって最も興味を引かれたプログラムは、日本の都市の高齢化を扱ったセミナーでした。

プログラムの3日目、会議の本編が閉幕した後、市庁舎内の別の部屋で、「高齢化社会、回復力のある都市(Ageing societies, resilient cities)」と題するセミナーが開催され、OECDの報告書「都市における高齢化(Ageing in Cities)」が発表されました。この報告書は、日本の富山市と横浜市を含む世界の9都市について、高齢化社会に適応すること、及び高齢化社会が生み出す機会を利用することにおける主要な問題点等について分析しています。セミナーでは、OECDの幹部職員のほか、高齢化問題に取り組んでいるマンチェスター市の議員や幹部職員などがスピーチを行いました。報告書の主執筆者であるOECDの公共ガバナンス・地域開発局、持続可能な成長のための地域政策課長の佐谷説子氏も、パネルディスカッションでスピーチを行いました。佐谷氏は、日本の国土交通省の元職員です。佐谷氏は、高齢化問題に関するマンチェスター市の取り組みや協働の手法から日本は学ぶことが多いと述べました。さらに、横浜市の高齢化への取り組みにおける官民のパートシップの役割や、高齢者のニーズを取り入れた同市の持続可能な住宅地モデルプロジェクトなどについて説明しました。

報告書「都市における高齢化」は下記のリンクから参照。
http://www.oecd-ilibrary.org/urban-rural-and-regional-development/ageing-in-cities_9789264231160-en

日本語概要版は下記のリンクから参照。
http://www.mlit.go.jp/common/001088717.pdf

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