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CLAIRメールマガジン vol.158(2016年10月21日)= ~ 伝統工芸、新たなステージへ ~

2016年10月21日 

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【特集記事1】イギリスの伝統工芸事情~日本の工芸品は受け入れられる?~
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英国には「伝統工芸協会(Heritage Crafts Association)」という2009年設
立のチャリティ団体が存在し、チャールズ皇太子が会長を務めています。当協
会は国の協力のもと、伝統工芸の維持発展を目的とした統一的な組織として、
そのために必要な調査研究や優れた職人の表彰、新たな担い手の育成支援など
を行っています。国からの資金支援は受けておらず、業界やチャリティ団体、
個人からのメンバーシップ料や寄付、展示販売等の収入でまかなわれています。

対象となる工芸品は鋳物、衣服・靴や家具制作など多岐に渡り、消滅の危機に
ある伝統工芸を探し出すために、広く情報提供の呼び掛けも行われています。
職人の高齢化、後継者不足は大きな課題で、伝統工芸の継承リスクは4段階に
分類されており、その他「情報不足」というカテゴリーが設けられています。
2016年10月現在ホームページを確認する限り木製ふるいが「消滅」に分類され
ており、「危機的状況」とされる木製はしごの職人は1名のみ(2016年4月時
点)、後継者もいない状態であることが分かります。後継者促進支援として、
様々な団体が資金提供を行う徒弟研修や教育機会の紹介が行われています。

また、伝統工芸品は保護の対象であるだけでなく、収益や雇用などの経済的利
益を生み出すものであることについても、データを用い積極的に広報されてい
ます。

一方、ロンドンで受け入れられている日本の工芸品について知るために、観光
客にも人気のサウスバンク近くにある工芸品を扱う店舗「和組」さんでお話を
伺いました。お店はデザイナーショップの並ぶ建物の一角にあり、「伝統工芸」
というよりは様々な文化的背景を持つ方にも受け入れられやすいデザインの陶
器や和紙製品など、高くても£300以下の比較的手ごろな値段の製品が並んでい
ます。購入者は30代以上の女性が中心、英国人だけでなく欧州各国からの観光
客も多いとのことです。旅行者にはかさばらない手ぬぐい(単色、朝ごはんや
茶道具の柄など)が人気だそうです。その他、有害物質の発生しないオーガニッ
クの和ろうそく、デザイン性の高い箸等も人気とのことでした。箸は特別に使
うものという意識が高いため、箸袋のついたものでも割り箸は売れにくいとの
ことです。陶器については、日本製は小さすぎるという声もあるとのことで、
ラーメン皿など大きなものを入荷することもあるとのことでした。

販売対象者によって売れるものは様々で一概には言えませんが、和紙などちょっ
としたものでも日常に使っていただくことで、日本への興味が高まれば有難い
ものです。

                   (ロンドン事務所所長補佐 濱田)

(参考)
和組< http://www.wagumi-j.com/ >

伝統工芸協会< http://heritagecrafts.org.uk/what-we-do/ >

工芸品継承リスク分類
< http://redlist.heritagecrafts.org.uk/wiki/doku.php?id=classification >

伝統工芸の英国経済への影響に関する報告書
(Department for Business, Innovation and Skills, 2012)
< http://blueprintfiles.s3.amazonaws.com/1368626588-CCS_HERITAGECRAFTMAP_FINAL_TEXT_PRINTAW_AW6.pdf >

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