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2014年04月03日


スピーカーシリーズ「欧州の食品輸出にあたって~英国(EU)における食品・農林水産物輸入規制の最新情報を中心に~」

2014年1月27日(月)14:00~15:30
講師:ジェトロ・ロンドン事務所 山田 貴彦 氏
於:クレアロンドン事務所 会議室

 当事務所では、英国及び所管国内における様々な分野の専門家を当事務所にお招きしてご講演いただき、その内容を日本国内の地方自治体等に広く情報提供すること及び在ロンドンの日系機関との情報共有等を目的として、標記スピーカー・シリーズを開催しております。
 2013年度第3回目としまして、ジェトロ・ロンドン事務所 農業・食品部門ディレクターの 山田 貴彦 氏を講師にお招きし、EUにおける食品・農林水産物輸入規制について、日本から欧州に食品を輸出する際のポイントを中心に、ご講演いただきました。主な内容を以下のとおりご紹介いたします。

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【EUの主要な関連規制】

1.輸入規制・手続関係
(1)動物検疫関係
・EUに輸出するためには、その品目において、日本が「EU域外国・地域リスト(第三国リスト)」に掲載された後、日本側の生産・加工施設がEUに認定されなければならない。ともに申請が必要。
・食肉・動物由来製品(肉・肉加工品、乳・乳加工品、家きん・卵・卵製品、天然はちみつ等)のうち、牛肉及びケーシング(ソーセージの表皮部分)以外は、第三国リストに日本が掲載されておらず、日本からの輸出は不可能。牛肉は、交渉を経て2013年に第三国リストへ掲載された。(現在施設認定の審査の段階)
・タイなどは、鶏肉、餃子などまで登録されている。これらは、申請するかどうかで決まる。業界も政府も大変だが、努力が必要。
・日本国内でも、施設の認定を得るのに必要な手続等に衛生部局等が必ずしも前向きでない場合が多い。理解・協力を求めるべき。
・水産物・水産物由来製品(動物検疫であるため、海藻等植物性のものは含まれない)については、第三国リストに日本が掲載されている品目で、EUにより認定された施設(冷凍船、養殖場、加工場等)で生産・加工された輸出物については、衛生証明書を付した上で輸出が可能(生きている魚類・貝類、生の魚卵、魚の精液は輸出規制あり)。
・動物性加工食品と植物性食品の両方を含む混合(複合)食品(composite products)で、一定の要件(食肉が入っていない、動物性食品が50%以下、安定した食品等)を満たす場合には、検疫対象から外れる。日本の食品の多くは、この例外規定により輸入されている。
・ただし、日本産の乳成分が少しでも入っているものは輸入不可。

(2)植物検疫関係
・野菜は多くが植物検疫証明書なしでEUに輸出できる。ただし、生果・切り花・盆栽等、一部の植物等については、特別な検疫条件を満たす必要があったり、日本で検査を受けて植物検疫証明書を添付する必要がある。品目ごとに細かく異なるため、品目を特定した上で、最寄りの植物防疫所に相談が必要。
・高知県はゆずの規制を独自にクリアしている。
・ジュースやジャムなどの加工品は特に問題はない。
・日本とEUで条件が合意されておらず、輸出が難しいものとしてはモモ、さくらんぼ、などがある。

2.放射性物質関係
・福島第一原発事故を受け、EUでは日本から輸入される食品・飼料について、別途手続きを要求。
・下記の地域の品目については、日本で放射性物質検査を実施した上で、放射性物質検査証明書を取得(注:下記は講演時(2014年1月現在)の情報であり4月以降改正されている(農水省HP参照)。)
  ① 福島:全品目(酒類を除く)
  ② 9都県(群馬、茨城、栃木、宮城、埼玉、東京、千葉、神奈川、岩手)
    :きのこ類、茶、牛肉、水産物並びに、一部の山菜類、一部の野菜、一部の果物及び一部の穀類
  ③ 青森、山梨、長野、新潟:きのこ類、静岡:茶及びきのこ類
  ④ ①~③の地域の品目を50%以上含有する加工品
・上記以外の地域の品目は、日本で産地証明書を取得
・上記手続きは毎年見直されている。
・例外として、日本酒、焼酎、梅酒等の酒類全般は本規制の対象外(手続不要)

3.食品衛生関係
(1)残留農薬
・2008年9月からEU内で規制を統一。
・日本と同様、ポジティブリスト制をとっており、掲載されていない農薬については、一律0.01mg/kgを上限に設定。

(2)重金属残留等
・硝酸塩、カビ毒、重金属等の特定物質については最大混入許容量が、品目別に定められている。

(3)食品添加物
・甘味料・香料・着色料等の食品添加物については、ポジティブリスト制であり、使用条件や使用限度量が物質ごとや使用する食品の品目ごとに定められている。また、すべての食品添加物は純度基準を満たす必要がある。

(4)遺伝子組み換え食品
・EUでは、日本と違い、最終製品中に遺伝子組み換えDNAまたはタンパク質が検出されなくとも、すべての遺伝子組み換え食品・飼料に表示が義務。
・EUが認可した組み換え体については、0.9%未満まで偶発的混入が認められている(日本は5%)。偶発的と認められるには遺伝子組み換え農作物を原材料としていない生産証明書が必要。
・規制の厳しさの度合いは、EU、日本、アメリカの順。

(5)新規食品
・1997年5月15日以前に輸入されていなかったものを新規食品とみなし、輸出するには当局に対して、科学的な情報や安全評価レポートなどを提出して、認可を得る必要がある。

(6)容量規制
・EUレベルでは、2007年10月にほとんどの容量規制が廃止され、現在では、ワイン及び蒸留酒のみが容量規制を受けることとなっている(750ml、1500ml等)。これは焼酎(蒸留酒)も対象となるということ。

(7)表示
・表示は、当該国で一般に使用されている言語で表示(複数言語表示は可能)。
・表示に関するEU新規則(regulation)が採択。施行までの猶予は、2014年12月まで(栄養表示は2016年12月まで)。
・一部の権限を加盟各国に残しつつも、各国の法規の調和を目指しており、施行後は各国の表示に関する法令は廃止。
・主要部分は従来同様だが、栄養開示の義務化(熱量+栄養成分6種。但し酒類は熱量のみ、)アレルギー情報の強化、原産地表示の拡大等が追加されている。


【EU規制に関する相談事例】
①動物性食品が含まれた混合食品の扱い
・動物性エキスが半分以下であればOK
・肉の塊が入っているものはダメ。(チャーシュー入りカップラーメン、肉入りレトルトカレーなど。)

②乳成分の扱い
・以前はEUに輸入されていたカレールー製品が、突如乳成分を含んでいるという理由で輸入不可になり、以前からずっと輸入できていたという事情は通用せず。シップバックのコスト等で数億円の損失を出した企業の例がある。それまでの検査官が気付いていなかった可能性有
・以降、乳成分を含むものは規制が厳しくなり、輸出用カレールーはミルクを含めず作られるようになった。カルピスも輸入不可になった。

③ユズは輸入できるのか?
・EUに輸入は可能。ただし、かんきつ属、きんかん属、からたち属及びこれらの交配種の生果実を輸出する場合、病害虫の検疫が必要なため、登録生産園地での栽培地検査、登録選果こん包施設での選果、果実の表面殺菌、輸出検査等をクリアしなければならない。
・ユズジュースなどの加工品は問題ない。

④日本の水産物輸出
・厚生労働省の指導の下、各都道府県が行っている対EU輸出水産食品の衛生検査が厳しく、前に進まない事例が多い。
・英国へ水産物輸出の際、変色防止のための一酸化炭素が検出され、追い返された。日本で再検査したところ検出されなかった。国によって検査方法が異なるのか?

⑤残留農薬規制、EU基準に則った証明書の添付の必要性。

⑥日本酒のEU域内流通時、酒税は各国毎で徴収されることに注意。

⑦焼酎は容量規制の対象だが、規制を超えたものを店頭で見かける。どこまで遵守すべきなのか?非常に曖昧。

⑧和牛のEU輸入解禁の現状
・第三国リスト掲載後、現在、施設認証の段階である。


【海外へ食品を輸出するには…】

①現地のマーケット情報の把握
・「自分の商品は品質がよいので、どこでも売れる。」はダメ。
⇒サプライ・サイドの発想ではなく、マーケット・インの発想を持つべき

②商流の確保
・輸出商社(日本国内)、インポーター(英国(欧州))と組む。
・現地での販路開拓には、メーカーが直接出向いて営業活動を行う必要あり。(インポーターは自ら営業活動してくれない。逆に現地へ出向いてまで活動を行う意欲があるかどうかを見ている。)
・英文の商品規格書が必要

③クリアすべき障壁の数々
(1)EUの食品輸入規制
 ・他国と比べて厳しい
 ・これまで説明したように、解釈でグレーゾーンが多く存在する(特に欧州の食文化にない、日本食材)加えて、運用が、各通関によってばらつきがあるのが非常にやっかい
(2)長距離輸送
 ・コスト高、賞味期限の問題、品質管理(赤道を通る)
(3)諸税(関税及びVAT)
(4)各種規格(オーガニック規格、食品安全規格など)


【輸出につながる効果的な支援とは】

・輸出に向けた気運の醸成
・情報の提供(前述の①~③)
・機会の提供(セミナー開催、商談会開催、ネットワーキングの支援など)
・ただし、最終的には、生産者の姿勢次第。

【ジェトロの活用】

・ジェトロのホームページには、輸出に関するあらゆる情報が掲載されているので、ぜひご覧いただきたい。支援サービス内容も幅広く充実しており、ぜひ活用してほしい。


【質疑応答】

●福島原発事故の影響の現状は?
⇒風評被害については、ほとんどなくなったのでは。物流に関しては、産地証明書の関係で、イングレの原産地の公表を拒むメーカーがいて輸出が止まってしまうというケースのように証明書(Annex)の取得に関わる手続きが煩雑であるため、物流に悪影響をもたらしておりこちらのほうが深刻。

●(製品に添付する表示について)日本語表記の上に、英文シールを貼る等で補ってもいいのか?
⇒然り。ただし、ラベルを貼るタイミングに関して各国で運用が異なる。英国においては輸入通関時に英文ラベルが無くてもよいが、仏等では、輸入通関時に現地語ラベルがないとダメという話を聞いたことがある。

●地域の酒蔵が日本酒をヨーロッパに売り出したいと考え、現地のインポーターに相談したが、現地に年に1度は来て営業活動を行う必要がある、と言われ結局諦めた事例がある。
⇒現地のインポーターは個々の商品の営業活動までは行わない。英国には現在200種類ほどの日本酒が売り出されており、全てをPRするのは難しい。メーカーが自ら営業活動をする必要があるので、そこはメーカー次第。
実際、売上を伸ばしている酒蔵は社長自らが年に何回か当地へこられている。エージェントを捕まえて、代わりに宣伝してくれる人を作るだけでもいい。

●実際に、どのような日本商品がヨーロッパで売れるか。
⇒売り方次第で何でも売れるはず。要はマーケティング次第。いくら品質が高くても売り方を間違うと売れない。英国で人気の日本レストラン「WAGAMAMA」は、日本食の味というよりは、少し高価でおしゃれな印象が人気になっている。現地のマーケット情報を把握しておくことが重要である。
 青森の黒にんにくは、ドイツやスイスで人気だが、売り方が良かった。
 また、福島の小桃のコンフォートがイギリスの高級レストランでデザートとして成功している例がある。これも単なる小売では成功しなかったはず。英語向けのパッケージの工夫など、一つ一つの商品に合った売り方や宣伝の仕方があるはず。

【講演資料へリンク(PDF)】



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