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2008年06月24日


スピーカーシリーズ「公共部門の財政管理の改善」

●テーマ:「公共部門の財務管理の改善」
●日時:2008年6月24日(火)14:00~15:20
●講師:Mr. Steve Freer
     Chief Executive, The Chartered Institute of Public Finance and Accountancy (CIPFA)

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ご講演要旨

【CIPFAについて】
・英国にある、公認会計士の6つの団体のひとつである。
・CIPFAは、その中でも、公会計に特化した団体である。
・CIPFAの試験に合格した公認会計士(PFA)1万3千人が所属している。その勤務先は自治体、医療保健機関、中央政府、議会などの公的機関である。


【公的部門における財務管理の重要性】
・今日は、公的財務管理の改善や、それによりいかにベストプラクティスを達成していくか、等についてお話ししたい。
・公的支出は、納税者の税負担によるものであり、納税者は、税金がいかに効率的、効果的に使われているかを知りたいと思っている。
・英国では、これまで、公共サービスを効果的・効率的に提供するために様々なことを試してきた。この10~20年にやってみたことは、例えば民営化、サービス利用者への選択肢付与、ベンチマーキングによる異なる組織間の業績比較などである。
・そしてここ2~3年、業績を上げるための、財務管理の重要性が認識されてきた。そのため、財務管理に関する研修への投資が増えてきている。
・財務管理を良くすることにより、統制も意思決定も業績もリスク管理もヴァリューフォーマネーも良くなる。つまり納税者の利益にもかなう。


【良い財務管理のために】
・よく「世界レベルの財務管理」という言葉を使うが、これは決して、単に役員会や理事会に財務部長を据えることではない。それだけではなく、役員会や理事会全体が財務管理に関与するということが必要なのである。
・そして、さらに組織全体の関与も必要である。意思決定の全てが、財務管理を意識したものであることが望ましい。
・財務管理のやり方について重要なことは、組織の意思決定全てを考えることである。そして、受託責任を果たし、成果をあげ、変革を続けることである。この2~3年、変化が見られた。公的組織のサービス提供方法の大きな変化を模索している。根本的に違うアプローチをしようというものである。大きなリスクも認識している。財務管理はこれら全てを網羅するものである。


【財務管理が貢献できること】
・ここ10年、中央政府の投資は増加しているが、投資がより良いサービスにつながっているだろうか?効率性の向上のために、財務管理はなにができるか。まずは、財務機能自体がまず効率的でなければならない。そして、組織全体の効率化へのアイデアを発信すること、分析、証拠探し、オプションの模索ができる。インセンティブを与えること、そして全ての従業員の貢献を求めること、節減内容を記録することも、重要である。このように財務管理による効率化ができれば、経費の節減となり、それは減税に回すこともできるし、より良いサービス提供に使うこともできる。効率性は重要な分野である。
・次に、サービスの共有である。例えば、複数の自治体の共同のサービス提供や、部門の統一などである。分野の例としては、ITや人事や不動産管理など。新たで困難な取り組みだが、簡易にできるようなモデルを開発している途中である。
・公的部門のサービス提供方法は、数年前までは2つの選択肢しかないと思われていた。つまり、直営でやるか、民間が提供するかの、どちらかだった。
・しかし、サービスの共有化は、そのふたつの中間に選択肢をつくりだすということである。たとえば、他の公的機関を巻き込んだり、官民が協力したり、などである。これも、検討中の分野である。


【CIPFAのその他の役割】
・CIPFAは、会計基準の策定や会計士の育成、資格認定のほか、次のような業務にも携わっている。
・まずIFRS(国際財務報告基準)を、公的部門全体に適用しようとしている。2010年度からの導入を目指している。困難な課題であり、一部基準の修正も必要である。
・また、政府版(ホール・ガバメント)の連結決算、つまり公的部門全体の連結決算も、2010年度までに導入することを目指している。2000団体が対象となる。
・そして、システム全体(ホール・システム)の財務管理である。機関の間のもの、例えば中央政府が、より良い財務管理を地方政府へ奨励する、というものである。このような、財務管理の技術的な改革に取り組んでいる。


【ハードワイヤーとソフトワイヤー】
・組織での良い財務管理のために重要なものとして、我々はよく「配線」(ワイヤー)という例えをする。
・これにはハードワイヤーとソフトワイヤーがある。いずれも重要なものである。
・ハードワイヤーは物理的な配線であり、必ず変化が起こるようなもの、例えば管理の構造やライン、役割分担のあり方、しくみと統制、内部及び外部監査である。
・一方、ソフトワイヤーは、影響や説得、財務部長の個人の履歴や業績やその能力、業務に対する理解である。ソフトワイヤーによって、財務機能が組織へ影響力を持つことになる。


(質疑)
・(CIPFAのその他の役割について)資格取得には3年かかる。我々の主要な役割はそのための研修と教育である。ほかには、地方自治体の会計基準の設定、その他財務管理基準の設定など。CIPFAは独立の機関であり独自財源が必要なので、報告書や書籍の発行、研修講師などの商業的活動も行っている。売り上げは4千万ポンド。職員数は350名。

・(世界への展開について)会計という業務が国際化している。基準も国内のものから、国際的なものとなった。我々も国際的に会員を増やそうとしている。現在の主な焦点はヨーロッパ、アフリカ、カナダである。これらはビジネスに英語を使うことに問題がない。そうでない国はやや大変である。言葉の問題さえ乗り越えられれば日本へも進出できると思う。まず我々は政府と話をする。CIPFAは国際機関へ移行しようとしている。費用はかかるが、途上国のほうが、世界銀行の支援が得られそうでもあり、進出しやすい。先進国はすでに会計基準があり我々のような組織もあり、ライバルとなる。

・(日本への、国際基準の適用の是非について)国際基準のように、現金主義から発生主義へ移行することは、資産活用面や負債・リスクの認識においてメリットがある。中央政府の理解を得ることや、外圧などもその力になるかもしれない。

・(財務管理の概念について)財務管理は会計士だけのものではなく、意思決定に重要なものであり、つまり全ての人が知り関与すべきものである。

・(政権交代が起こった場合)保守党も、最低限のコストで最大のサービス、という考え方は同じである。両党の差は少なくなってきている。

・(英国の、会計の歴史)発生主義については、自治体は既に20~30年もの歴史がある。国はまだ5年ほどである。自治体は、管理職に常に会計士がいた。そして、会計基準を設定しているCIPFAが発生主義会計への移行を進めた。国が導入したことの効果はまもなく現れるのではないか。また、公会計に特化したCIPFAのような組織は、英国独特のものである。国際会計士連盟(IFAC)に入っている150団体の中でも、我々のような団体はほかにない。

・(加盟している会計士について)CIPFAに登録している会計士1万3千人中、5千人が地方自治体の職員である。つまり1自治体あたり平均10人以上という計算になる。法律により、自治体は1名以上の会計士を持たなければならない。自治体の予算で、CIPFAで自治体職員の研修を行うこともよくある。
(以上)

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