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調査・研究

スピーカーシリーズ

‘Experiences through Japan In Perspective’ & ‘JETAA UK’

2016年10月21日 

2016年度第1回スピーカーシリーズ

‘Experiences through Japan In Perspective’
& ‘JETAA UK’

2016年9月22日(木)10:00~12:00

講師:セーラ・パーソンズ氏

  (Japan In Perspective代表、JETAA英国代表)

於:クレアロンドン事務所 会議室

 2016 年度第1回目のスピーカーシリーズでは、日英の企業に対し、相互の商慣習・文化理解促進のためのコンサルティングや職員研修等を提供するJapan In Perspectiveを立ち上げ、またJETAA英国代表であるセーラ・パーソンズさんを講師にお迎えしました。第一部では、ご自身のビジネスのJapan In Perspectiveの活動内容と、日本との違いから分かる英国と英国人に関するお話を伺い、第二部では、JETAA(JETプログラム(※)同窓組織)の英国での組織や活動内容などについてお話を伺いました。
※JETプログラム(Japan Exchange Teaching Programme):海外の若者を日本に招き、主に中学校・高等学校での英語指導や自治体での勤務などに従事してもらう事業。

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<第一部 Experiences through Japan In Perspective>

○プロフィール

 1995年から1998年にかけて、群馬県のALT(英語補助教諭)として日本に滞在した。帰国後、自治体国際化協会ロンドン事務所に勤務し、英国の小学校教諭の経験を経てJapan In Perspectiveを立ち上げた。現在は複数の大学の国際ビジネスコースなどで講義も受け持っている。また、JETAA英国代表でもある。

(日英企業の相互文化理解支援)
○Japan In Perspectiveの目的と主なクライアント
 日本に滞在し、日本の機関に勤務したことから、日米の商習慣や文化の違いに気付き、日英企業の懸け橋となりよりよい相互理解を図っていくことを目的として会社を設立した。
 クライアントは、大きく3つに分類される。1つ目は、英国企業で日本への投資や展開を行おうとしている企業、2つ目は英国企業で日本企業の会社買収や合併により、英国人社員が急きょ日本の商習慣、文化を学ぶことが必要になった企業、3つ目は日本企業で英国への進出を行っている企業である。3つ目については、ロンドンでは一定規模の日本人コミュニティがあり日系の学校、病院等も存在するが、近年日本企業の進出の増えているマンチェスターなどではそういった機関がなく、赴任後生活に戸惑う日本人社員や家族も多いので、英国の生活になじめるよう講義等を行っている。

○日本人が英国生活で感じやすい違和感
 言葉も大きいが、日常のサービスの違い(運送や排水管修理などが日本に比べて遅いなど)や電車の大幅な遅れなどがあげられる。
また、個人主義的なものの考え方になじまないということも傾向としてあるようだ。

○文化の違いを理解
 Erin Meyer, INSEAD from the Culture Mapによると、日本のコミュニケーションはコンテクストが高く、同等の知識や価値観の共有を前提にコミュニケーションが行われる傾向にあるが、ドイツはコンテクストが低く、互いの意見を率直に交換する傾向にある。地域や国により傾向が異なることを知っているとコミュニケーションが図りやすくなる。

○英国と日本の企業文化の違い
 日系企業の英国での組織作りにおいて、うまくいかない例としてよくあるのが、英国人社員の評価の仕方があげられる。英国人社員は何が評価され、改善すべき点は何かを明確に示してほしいと思っているが、日本人の上司はその過程を十分に踏まず、最終的な「良い・悪い」のみを伝えてしまうことがある。英国人社員に不満がたまり、また士気もあがらないという結果を生んでしまう。日系企業であっても、英国の組織管理手法を取り入れることで、生産性をあげることができる。
 企業内の決定についても大きな違いがある。日本ではあらかじめ「根回し」が行われ、実際の決定は根回しで決まり、会議は形式的な場ということが多いと思われる。決定までに時間もかかる。一方英国では、意見交換をした上で決定を行うが、決定後も変更はよく行われる。英国人からすると日本企業の決定は遅く段階が見えづらく、日本人からすると英国企業の決定変更は想定外のことと受け止められやすい。一部の英国進出日系企業では「根回し」の方法が英国人社員にも紹介され英国内でも行われている。一方で、日系企業の中には英国人がマネジメントを務めているところもあり、そうした企業では英国の方式が採用され、その管理の下で日本人社員も働いている。

○企業内における英国人の傾向
 英国人は成果等を誇張する(自慢する)ことを好まない傾向にあり、礼儀正しさを重んじるが、これは日本人と通じるところがあると思う。
 その他、ユーモアを好み、長時間労働はあまり行われない。基本的には個人で業務を行う環境が多いが、チームワークもうまく行える。転職はよく行われることで、会社への帰属意識は強くないことが多い。仕事の仕方(方法)を押し付けられることは好まない。

○英国人社員の士気を高めるためには
 具体的には、公平で明確な基準に基づいた評価を行い具体的に伝えること、個人の優れた点をほめること、組織目標の他に明確な個人目標を設定すること、ワークライフバランスを尊重することなどがあげられる。

○その他の英国人の傾向
 コミュニケーションを図る上で留意するとして、英語の表現は日本語に比べ直接的であるが、アメリカ英語に比べるとイギリス英語は婉曲な表現が多い。また、丁寧に(フォーマルに)なりすぎることは好まれない。

(日本の自治体が英国で活動を行うための基礎知識)
○英国での「日本」の受け止められ方
 世代により大きく異なる。若者はマンガやアニメなどポップカルチャーへの関心が高いが、上の世代はサムライなどを連想する人も多い。禅と渋谷の交差点の騒音など、日本は相対するものが共存し複雑で「奇妙な」ところだと思われる傾向にある。
 近年はテレビでも日本を取り上げた番組が放映される機会も増えた。ニュースでもよく取り上げられるが、一方で特殊な事件の方が紹介される頻度が高い。
 昨今では日本を旅行する英国人も増え、また英語学習などのために英国に滞在する日本人も増えている。そうした中から日本について理解していく人も増えてきた。

○日本の地域PRについて
 日本では、地域や産品などについて、「最高(best)の温泉」「最高のうどん」というPRがなされるが、英国人に向けては、ランキングはあまり効果がない。反対に、根拠なく自慢しているように受け止められかねない。

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<質疑>

○ビジネスではあまりかしこまらない方が好まれるとお話があったが、英国の方には、日本の「おもてなし」はどのようにとらえられるか?

→ 日本の文化として、伝統的で丁寧なもてなしをされることについては歓迎する人がほとんどだと思う。ただ、それが続き過ぎると、ビジネスにおいては距離を置き過ぎているという印象を持たれることもありうるので、バランスが必要。

○日本のマスコットについてはどういった印象か?
→ 面白いし「かわいい」と思う人も多いが、ビジネスの場にはなじまない。ビジネスの場でマスコット人形が登場したり、名刺に印刷されていたりすると違和感を持たれる。 日系企業でも、英国内でのPRやロゴにはマスコットは使用していない。

<第二部 JETAA UK>
 JETAA(JETプログラム同窓会組織)は、元JETプログラム参加者により各国や地域で運営されている組織であり、実態として日本の自治体派遣職員にはJETAAの活動内容について知る機会が少ないため、JETAA英国代表として、活動内容等についてお話をいただいた。

○JETAA UKについて
・元JETプログラム参加者によるボランティア団体。英国に帰国後も日本とのつながりを保ち、草の根活動を続けてもらうことを目的に、(一財)自治体国際化協会が資金提供を行っている。
・約6000人の登録があるが、活動会員人数は限られている。帰国後、登録はしても活動に参加しない人も多い。また、登録後に情報更新をしない人も多いので、メールアドレスの変更などにより不通となっている人も多い。
・役員(会長、副会長、会計、ウェブサイト担当、英国内各支部代表など)を定め、年に1回総会を実施している。
・JETAA UKは4支部(ロンドン、スコットランド、ノースウェスト、ミッドランズ)で構成される。

○活動内容
・社会・文化・教育上の日本とのつながりを保ち、英国内で促進することを目的とした活動を行っている。JETプログラム修了者の帰国後の就職支援にも関わっているので、英国内日系企業等との関係促進も重要な役割である。
・具体的には、各支部によるソーシャルイベントの開催(地域のお祭りなどに合わせて行うものや、七夕祭りなど日本の祭の紹介実施など)や、ソーシャル・メディア(Facebook、ツイッター、Linkedinなど)による呼びかけ、ウェブサイトとメールショットによる情報発信等を行っている。
・通例となっているJETAA年間行事には、新規JET出発前イベント(ロンドンの日本大使館で行われる公式イベントとは別に、各支部が開催)、帰国者歓迎イベント(ロンドン・スコットランド:それぞれ日本大使館、領事館による公式イベント、ノースウェスト・ミッドランズ:非公式イベント)が行われている。例えば、ノッティンガム(ミッドランズ)の出発前イベントには、地域に住む日本人にも参加してもらい、アットホームな雰囲気で行っている。

○教育機関との連携
・多くの元JETが教育機関で勤務しており、日本語・日本文化振興を行う国際交流基金(Japan Foundation)とのつながりも深い。元JETの中には、国際交流基金やJapan Societyを通じて、Japan Dayなどのイベントに合わせて学校でボランティア(日本語、日本文化教育などの支援)を行う人もいる。
・スコットランド、ノースウェスト、ミッドランズ支部では、ボランティアの一環として日本語学習クラスを定期的に行っている。
・今年12月には、シェフィールド大学の元JETの企画により、JETAAによる学術会議が開催される予定。このように高等教育機関との連携にも近年力を入れている。

○就職・キャリア支援
・JETAA UKはプロフェッショナル(様々な業種の職業人)による大規模な組織でもある。日英に関わる政府機関・教育機関、また日系企業に務めている人も多い。このネットワークにより、互いにキャリアアドバイスやサポートを行ってもいる。
・昨年は、JETAA UKウェブサイト上に日系企業や政府機関(東芝、日本大使館)の求人募集も掲載した。
・2001年頃には、「Career’s Day」を設け、日系企業がブースを設ける就職相談会を実施し、200人ほどの参加者があった。しかし、インターネットの普及により就職の形態が変わり、こうしたイベントに参加者を集められなくなり、実施されなくなった。これはJETAA UKへの実質的な参加者減少の大きな要因にもなっている。
・過去2年、「Career’s Day」を自ら開催した。英国内の日系企業などで働く元JETに集まってもらい、履歴書の書き方指導や、元JETによるパネルディスカッション(テーマには、JET後に学術機関に務めることや、英国外務省に勤めることなどを含む)などを行った。今年はロンドン支部が実施する予定。
・その他、個別の企業と支部が協力し、イベントを実施している。例えば、ミッドランズ支部による、ノッティンガム大学とトヨタとのネットワーキングイベントや、ノースウェスト支部とブラザーとのイベントなど。こうした機会を通じ、元JET同士が出会うことを促進している。
・日英の議員グループにより、元JETが英国国会議事堂に招待されたこともある。

○現在の課題と対応
・ボランティア組織のため、運営に関わってくれる人が少ないのが何よりの課題。イベントを企画しても、スピーカーにはなりたいが運営はしたくないという人が多い。また、金銭や今後のキャリアなどの見返りを期待する人もいるが、あくまでボランティアのためそうしたことは難しい。役員の集まりについても、それぞれ職業があるため、なかなか会合が持てない。
・JETAA UKへの参加呼びかけとして、様々な活動を行っていることを広く知ってもらうために、BBCラジオ(元JET勤務)番組で活動内容を紹介するなど、広告に勤めている。すぐに具体的な職業が見つかるという組織ではないが、ネットワークの中でキャリアにつながるものが見つけられることも紹介している。
・(セーラ・パーソンズさんが自治体国際化協会ロンドン事務所のJETAA担当として勤務していた)2001年頃に比べると、現在はJETAAのイベントに限らず、日本に関わるものだけでも様々なイベントが各地で行われており、気軽に参加できるので、継続してJETAAに関わってもらうことがより困難になっている。2006年頃までは、「Jetlag」という、元JETによる情報交換誌を年4回発行し、元JETに配布していたが、それも予算の都合やインターネット普及により廃止された。
・新たな情報発信手法として、メールショット、FacebookなどのSNSを活用している、現在はFacebookが最も頻繁に利用されている。
・約30年に渡るJETAAの強みは、人材の層が厚く様々な業界で活躍している人が多いことである。現在は活発に活動していなくても、そうした人を取り込んでいくことでより意義のある組織にしていくことができる。来年3月には30周年記念レセプションを英国国会議事堂で行う予定(なお、JETAA UKが正式にいつ組織されたかは不明であるとのこと)。

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