Japan Local Government Centre (JLGC) London > 調査・研究 > 欧州の地方自治情報 > 英国 > 英国の地方自治メモ > ロンドン貸自転車サービス:対象区域を市の西部まで拡張/契約更新に疑義

調査・研究

英国の地方自治情報メモ

英国

ロンドン貸自転車サービス:対象区域を市の西部まで拡張/契約更新に疑義

2011年08月15日 

昨夏導入され、延べ600万回の利用実績を誇るロンドンの貸自転車サービスが、2013年夏までに西部並びに南西部まで拡張されることが発表された。

 この計画は、サービス導入の1周年を期して発表された。
 昨年7月に開始され、毎日、約2万2千人が5千台以上の自転車を利用している。現在、カムデン区、シティ、ハックニー区、イズリントン区、サザーク区、タワーハムレット区、ウェストミンスター区のそれぞれ全域と、ランベス区とケンジントン&チェルシー区の一部、さらにいくつかの公園で運用されている。
 今回拡大の対象となる範囲は、ワンズワース区、ハマースミス&フルアム区、ランベス区、ケンジントン&チェルシー区の全域。サービスのスポンサーであるバークレー銀行から新たに2千500万ポンドの出資を得て、今後2年間で実現する。
 その端緒として、ロンドン西部のホワイトシティにあるウェストフィールドショッピングセンターに別途4百万ポンドの出資を募り、2012年春までに、新たに12のドッキングステーションを増設することとしている。
 ロンドン交通局は、2012年までに、ロンドン東部に2700、セントラルロンドンに1500のドッキングポイントを増設すると発表した。
この事業拡大に2500万ポンドを拠出するバークレー銀行は、この事業への協力を3年延長し、2018年まで継続する。
 一方で、本件については多くの批判もある。
 
 ジョンソン市長は先週、現在2015年までとなっているバークレー銀行との、本サービスに対するスポンサー契約を2018年まで3年間延長することを発表した。しかし、ロンドン議会の自由民主党議員から、契約更新にあたって、当初は計画されていた競争入札のやりなおしを行わなかったことを批判されている
 BBCロンドンの調査が明らかにしたところに拠ると、ジョンソン市長は、バークレー銀行に対して支援を続けるよう、個人的に働きかけた一方、他の銀行に対しては一切接触しなかったという。
 自由民主党のカロライン・ピジョン議員は、なぜ、他の銀行や団体に対してアプローチすることを検討しなかったのか、入札の実施を検討しなかったのかを明らかにするよう、市長に対して質問状を送付した。
ロンドン交通局のスポークスマンは、「スポンサーシップについては、銀行、金融業を含めて様々な出資元を想定した」と発言している。
 BBCロンドンは先週、バークレー銀行は、第2回目の入札手続きの後契約を行ったが、その手続きの実施は公告されておらず、競争的ではなかったことを明らかにした。
 本サービスの第1回入札は2009年8月に実施され、電力会社EDFと携帯電話大手ノキアが応札したが、入札額が低過ぎて、不調に終わった。このとき他にO2とニュースインターナショナルの2社が、興味を示していたが、応札には至らなかった。
 バークレー銀行との交渉の後、スポンサーに対する要求内容は、ロンドン交通局の職員によって大幅に改善された、
 今回は、契約内容に事業費2億ポンドの自転車用高速道路へ出資が追加された。この事業費は、貸自転車サービスとほぼ同じくらい高額である。また、オリンピック開始に間に合うようロンドン東部へのサービス拡大を完了させることを保障している。バークレー銀行本部はカナリー・ワーフにあるが、カナリー・ワーフは第2期計画の拡大対象範囲である。
 本サービスのスポンサーは、サービス利用者の個人情報にアクセスする権利を持ち、利用者に直接マーケティングツールを送ることができる。ロンドン交通局は、バークレー銀行はこの権利をそれほど行使していないとしている。バークレー銀行は、さらに、市が運営するこの貸自転車サービスに対しては、競争関係にある他の銀行からの出資は排除するという保障を与えられている。
 バークレー銀行は、2010年3月、契約に対する入札に指名された。
同行はすでに2500万ポンドを同サービスに拠出しているが、サービス拡大のため、追加で2500万ポンドを提供することになる。
 以前、バークレー銀行の広報担当者は「5千万ポンドはかなり高額な投資と考えている。が、本行は、当初の2500万ポンドの合意の際、第2期計画があることは承知していた。(第2期では)サービスエリアを東部に拡大することは知らされているが、具体的にどこになるかまでは聞かされていない」と発言していた。
 バークレー銀行の唯一の競争相手はEDFだけだったが、EDFは最初の応札時に、多額の資金出資に加えて、社会基盤整備にも投資すると誓約していたにもかかわらず、却下されていた。
 より多くのスポンサーの注目を集め、よりよい提案を得られたかもしれないにも関わらず、今回の契約更新の公告は、EUの公報に新たに掲載されることはなく、競争的プロセスの公開も行われなかった。
 マトリックス弁護士事務所のデビッド・ウルフ弁護士は、2回目の「プライベートな」手続きは、第1回目と同じ手続きに則ったものではないため、納税者にとって最も有利な成果を生むよう努力したとは見做されず、提訴される可能性があると指摘している。
ロンドン交通局の広報担当者は、「公告こそ行わなかったが、2回目の取引について、これまでに興味を示した4社に対しては、通知を行っている。前回興味を示した企業にとっては、提案内容を見直し、より魅力的なものにするために十分な機会だったと思うが、応札したのは結局1社だけであった。初回、2回目の入札とも内容は十分に吟味され、結果、バークレー銀行の提案が高評価を得てスポンサーと決定された」と発言した。

【出典】
BBCニュース
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-london-14322923(2011年7月28日)
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-london-14362121(2011年8月1日)
ガーディアン紙
http://www.guardian.co.uk/uk/2011/jul/28/london-cycle-hire-scheme-expand-west
(2011年7月28日)

ページの先頭へ