調査・研究

地方自治体等訪問

メドウェイ市訪問記録

2010年08月06日 

2010年6月8日(火)に、テムズ川河口部に位置するメドウェイ市を訪問しました。以下にメドウェイ市の政策及び組織等について一部を紹介します。

【メドウェイ市概要】
・イギリス南東部に位置するケント県の一部であった5町(ロチェスター、チャタム、ストゥルード、ジリンガム、レイナム)が合併し、最終的に1998年に一層制自治体のメドウェイ市となった。
・市人口は約26万人。イングランド南部地域では、ロンドン、ブライトンに次ぐ。
・William Adams(三浦按針)の生地として知られ、彼とゆかりの深い静岡県伊東市及び神奈川県横須賀市と姉妹都市提携を結んでいる。
・19世紀の文豪チャールズ・ディケンズが幼少期を過ごし、没したゆかりの地でもあり、それを活用した町おこしを行っている。

【メドウェイ市の組織・機構】
・メドウェイ市は「リーダーと内閣制」をとっている。
・市長(Mayor)は儀式的な位置づけで、政治的な権限を持たない。例えば、王室来訪時の対応等は市長の役目であり、リーダーの役目ではない。市長はまた議会議長としての役割を持つ。市長は一年交代制であり、市長としての任期中は、政治的に中立の立場をとる。
・リーダーが実質的な権限を持ち、内閣を組織する。メドウェイ市の場合、内閣はリーダー及び9名の議員から構成されている。メドウェイ市は保守党の単独支配となっており、リーダー及び内閣構成員は全て保守党所属議員である。
・議員総数は55名で、市内に22ある選挙区から各1~3名が選出されている。議員の任期は4年で、メドウェイ市は4年に1度の全議員改選制を採用している。次回改選は2011年に予定されている。
・入閣しなかった議員の一部は政策評価委員会の委員となり、内閣を監視し内閣に対して助言を行う。政策評価委員会は議会における政党の議席配分比率に応じた議席配分となっている。保守党の単独支配となっているメドウェイ市では、政策評価委員会でも保守党が最大議席を掌握しているため、比較的円滑に行政運営がなされている。
・内閣は、政策評価委員会の助言に従う必要はなく、最終的な判断は内閣が自らの責任で行う。
・市事務部局は、3つの局に分けられる。「子ども・成人サービス担当局」、「都市再生、地域社会・文化担当局」、「内部管理担当局」の3局が存在する。
・これら3局の業務を9つに分けて、9名の内閣構成員がそれぞれ各分野の最高責任者を務める。
・各内閣構成員及び事務部局は、レポートのかたちで書類を作成して閣議に案件を諮る。
・閣議の議長はリーダーが務め、会議は一般市民が傍聴できる。守秘に当たる案件を審議する際は、アジェンダの最後におき、報道関係者ならびに市民を退席させた後、行う。当日は、火葬場の設備改善に関する案件、バスのサービス提供に関する契約案件等について審議された。閣議案件については、事前に事務部局から内閣に対して詳細な説明がされているようで、訪問当日は、各案件5分程度で意思決定がなされていた。
・内閣構成員のうち1人が、閣議の途中で席を立った。これは、自分が関連する会社との契約案件が審議されようとしたため。退席したことは、議事録及び報道関係者が書く記事に記される。
・英国地方自治体は、警察及び保健医療に関して権限を有しないが、保健医療サービスの監視を行うことは法的な権限として認められており、政策評価委員会がその役割を担っている。

【都市再生政策】
・メドウェイ市では現在、メドウェイ川沿岸付近を中心に「Medway Renaissance」と称する都市再生政策を実施している。
・メドウェイ川沿岸の造船所が1984年に閉鎖されたことを契機に、地元の大学と連携しながら、新たに企業を呼び込むためにインフラ整備等を進めている。
・一方中央政府は、ロンドン都市圏の成長及び拡大に伴い、ロンドン近郊に位置するメドウェイ市の再開発が必要と考えていた。両者の考えが一致し、同政策の一部には中央政府からの補助金(テムズ・ゲートウェイ計画の一環)が充当されている。
・都市再生政策の政策目的は、①住宅供給を増やす、②雇用機会を増やすことにある。
・市の人口は増加傾向にある。ロンドンへの高速鉄道が運行を始めていることもあり、ロンドンへの通勤者も多い。そのことが原因で、昼間人口が少なくなっている。
・メドウェイ市には、上述のとおり閉鎖されたドック跡や26万人の人口等の資産がある。これらは同政策を進める上での利点となる。これに関して、市周辺には4つの大学もあり教育水準の高い地域であることから優秀な人材が多いことも企業誘致の際の強みとなっている。
・たとえば、造船所跡地は歴史的価値のある建物についてはそのまま残して中を改修し、博物館や小規模事務所などとして活用しているほか、新たに住宅や商業施設を建設し、集客施設としている。
・同政策の一環として、環境対策も行っている。中央政府の環境庁との協力により以前は深刻な問題であった公害問題を解決した。環境が改善されたことで現在では、メドウェイ川での釣りも盛んである。
・メドウェイ市では、Innovation Centreを設け、地元でビジネスを始める企業に対し、産学連携支援等に関するノウハウを提供している。
・同政策の財源として、民間資金の活用も行っており、例えば市が整備した工業用地に進出する企業に対して、その敷地周辺の道路整備にかかる経費の負担を企業に求めるなどしている。
・また、Rochester区に豊富に残る歴史遺産やドック跡を活用した観光振興を図っており、今後、ロンドンのツアー会社や観光ガイドを観光している出版会社等への情報提供の強化を計画している。その一環として、再開発地域へのホテル誘致を行っており、近く大型ホテルが建設される予定。

【その他】
・高校生交換プログラムとして、毎年、横須賀市と伊東市から各2名の高校生を受け入れている。

【William Adams(三浦按針)ゆかりの地】
St. Mary Magdalene Church(按針が洗礼を受けた教会。当時の洗礼記録が残っており、市の博物館で保管されているとのこと)

教会
教会2
クロックタワー
↑William Adams Clock Tower Memorial

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