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アイルランド共和国における自治体再編について

2014年11月20日 

アイルランド共和国では、2014年6月に「地方自治体再編法2014」の関係部分が施行され、以下のとおり自治体再編が行われた。

(主な再編内容)
○地方自治体の構造について
 従来、アイルランドでは、首都ダブリンやヨークなどの都市部はシティ・カウンシル(5団体)の一層制、その他の非都市部は、上層のカウンティ・カウンシル(29団体)、下層のタウン・カウンシル(80団体)の二層制を採用していた。今回の再編では、非都市部の80のタウン・カウンシルを廃止するとともに、3の地域でシティ・カウンシルとカウンティ・カウンシルを合併し、地方自治体の数は114団体から31団体に減少した。 

○地方自治体関連組織について
 従来、アイルランドでは、全国を8つの地域に区分した「地域自治体」と、南北2つの地域に区分した「地域議会」とが設置されており、各々において、地域内の行政サービス向上、EU関連事業の監視・事業評価などを担っていた。今回の再編では、これらの組織を廃止し、代わりに新たに3つの地域議会を設置して、EU関連事業の監視・事業評価を行わせるとともに、国土開発計画や経済開発においてより強い役割を担わせることとした。

 今回の再編について、ホーガン環境・コミュニティ・地方自治担当大臣は、「アイルランドの歴史の中で初めての大幅な再編となるが、市民が求めるサービスを提供するためには必要なものである。」と述べている。また、この再編の効果について、同氏は「今後4年間で、420百万ユーロ以上の納税額の減額が可能となる」とも述べている。

参考URL
http://www.environ.ie/en/LocalGovernment/LocalGovernmentReform/ http://www.environ.ie/en/LocalGovernment/LocalGovernmentReform/News/MainBody,34299,en.htm
http://www.rte.ie/news/2012/1016/341810-phil-hogan-local-government-cabinet-politics/


アイルランド下院総選挙で野党フィネゲール党が第1党に

2011年03月15日 

2011年2月25日に行われたアイルランド下院総選挙(定数166)は、それまで最大野党だったフィネゲール党(Fine Gael)が76議席を獲得し第1党となった。しかし過半数には届かなかったため、労働党と連立政権を組み、フィネゲール党首のエンダ・ケニーが首相(Taoiseach)に就任した。
 長期に渡って政権を維持してきた与党フィナフォール党(Fianna Fáil)は20議席にとどまり、第3党へと転落した。国際通貨基金(IMF)からの金融支援受け入れなどをめぐり強い批判を受けていた与党への国民の批判は強く、首都ダブリンでの同党の支持率はわずか8%にとどまった。なお、全体の投票率は70.1%だった。
 フィネゲール党が総選挙の際に掲げたマニフェストにおいて、地方自治体に関連して言及した主な個所は以下のとおり。
・雇用や住宅といった分野の権限を外郭団体から地方自治体に戻す
・ダブリンに直接公選首長制を導入する
・地方自治体効率化レポート(Local Government Efficiency Review)において奨励されている、事務の共同化や幹部職員の削減といった、支出削減方法の少なくとも80%を実施する
・国営のアイルランド水道公社を設立し、各自治体の水道部門の機能を引き継ぎ、合理化する
・自治体が文化ツーリズムを促進できるように支援する。芸術専門職員の採用も奨励する。
 また、農業分野に関しては、「Food Island」としてアイルランド島を売り込むことや、フードツーリズムの推進、また、観光分野においては、関係組織の合理化を進めること、アジア及び、ヨーロッパ大陸のうち未進出の地域にマーケティングを行うこと、2012年のロンドンオリンピックを観戦する観光客の取り込みを進めるなどとしている。
 北アイルランドとの関係においても、グッドフライデー合意(ベルファスト合意)、聖アンドリューズ合意の完全実施を支持すること、アイルランド島における主要なインフラ整備(電力、交通、通信など)の整備において協力するとしている。

【出典】
BBCウェブサイト
http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-12585048
アイルランド総選挙結果2011
http://www.oireachtas.ie/documents/publications/2011_Electoral_Handbookrev.pdf
フィネゲール党 マニフェスト
http://www.finegael2011.com/pdf/Fine%20Gael%20Manifesto%20low-res.pdf


2011年の地域道路及び地方道路計画が発表に

2011年02月01日 

2011年の地域道路(Regional Road)及び地方道路(Local Roads)の整備計画が発表になった。アイルランド政府は、毎年初めに「国道」と「地域道路と地方道路」(※1)の計画を発表している。前週には、国道に関する2011年の計画が公開された。
本日(2月1日)、パット・キャリー運輸相は、3億7,500万ユーロの支出を伴う「地域道路と地方道路」計画を発表した。補助金の構造は全般的に簡略化されており、主な特徴は以下のとおりである。
・道路の維持・補修のためのプログラムに2億1,000万ユーロ
・地方自治体が全く自由に選んだ道路の維持、強化に5,500万ユーロ
・アーバン・オーソリティー(※2)が自由裁量で選んだ道路やフットパスの維持・補修に2,720万ユーロ
・寒波における道路手当のために1,000万ユーロ など
運輸相は、「今年は、優先的な投資を最も必要としている地域において、この計画下における回復・改善プログラムを再び導入する。総計で1億5,000万ユーロがこの補助金のカテゴリーのもと、地方自治体に配分される。なお、最近の厳しい気候を鑑みて、もし必要であれば、自治体は回復・改善プログラムを自由に変更して、それに対応することも可能だ。厳しい寒さが続く期間に道路を手当するために使うWinter Maintenance Grantと呼ぶ補助金も別途、導入する」とコメントした。
※1「国道」は、主な港や空港と大都市圏及び大都圏と大都市圏を結ぶ幹線道路であり、国内物流の大動脈として機能している。また、主な都市間を連結する道路及び主要国道へのアクセス道路として位置付けられる。「地域道路」は、道路総延長の11%、全交通量の24%を占めており、主に国道と国道を連結する道路を指す。また、道路総延長の83%をカバーしているのが、国道及び地域道路のカテゴリーに属さない「地方道路」である。
※2 二層制自治体の下位団体であるバラ・コーポレーション及びアーバンディストリクト・カウンシル

【出典】Irish Government News Service
http://www.merrionstreet.ie/index.php/2011/02/minister-pat-carey-announces-e375-176-million-for-2011-regional-local-roads-programme/?cat=12


世界で最初の観光用携帯端末アプリケーションソフトが、ダブリンでスタート

2010年09月01日 

観光客が興味ある目標物に携帯端末を向けるだけで、ダブリン市の観光情報を得られる新しいスマートフォンのアプリケーションソフト(アプリ)の運用をハナフィン観光・文化・スポーツ相がスタートさせた。
さらに、そのアプリを使って、観光客は実際に訪問する前にヴァーチャルにダブリン市の他の地域を探索し、施設の営業時間や画像、音声を入手できる。アプリは大ダブリン市をカバーし、半径10kmの情報にアクセスすることが可能。
ダブリン観光局によれば、観光局とそのパートナー組織は、世界中の観光客にダブリンを宣伝するためのデジタル化戦略に1000万ユーロを投資しているところで、それは2015年までに100万人の訪問者増加をもたらすと見積もられている。
このアプリは、サービス開始時で大ダブリン市域のおよそ1,400もの見どころをカバーしており、観光客は対携帯端末を目標物や建物にかざすだけで、それらについての情報を取りだすことができる。
なお、アプリの価格は2.99ユーロとなっている。

【出典】アイルランド政府 プレスリリース
http://www.merrionstreet.ie/index.php/2010/09/hanafin-launches-world-first-dublin-tourism-mobile-app/?cat=3


公営住宅を「借りてから買う」パイロットスキームがダブリン市にてスタート

2010年07月15日 

ジョン・ゴームリー環境・遺産及び地方自治大臣と、マイケル・フィンネラン住宅・地方行政サービス担当大臣は7月20日、売れ残った低廉住宅の販売を効果的に展開する目的で、新しい「Rent to Buy」(借りてから買う)スキームを開始した。
この計画の下では、低廉住宅は3年を上限に貸し付けできる。申込者は、この3年の間いつでも、事前に同意した価格で、貸し付けされている家を買うかどうかを選ぶことができる。支払いをした賃料の80%を低廉住宅の購入に充当することが可能。年間で最低2万5千ユーロを稼ぎ、住宅ローンの支払い義務を果たせるという基準を満たす申込者がこの計画を利用できる。
ダブリン市は、このパイロットスキームの運営と成果に関する報告を、年末までに大臣に提出することを求められている。

【出典】
アイルランド地方自治省(環境・遺産及び地方自治省)ウェブサイト
http://www.environ.ie/en/DevelopmentandHousing/Housing/News/MainBody,23468,en.htm
ダブリン市ウェブサイト
http://www.dublincity.ie/Housing/Renttobuyscheme/Pages/default.aspx


廃棄物管理政策の国際的な見直しを発表

2009年12月07日 

ジョン・ゴームリーJohn Gormley環境・遺産及び地方自治大臣は、11月19日、廃棄物管理政策Waste Management Policyの大幅な見直しに関するレポートを発表した。
 大臣の命により作成されたこのレポートは廃棄物管理政策全般にわたり、残留廃棄物の管理を最小限とし抑制する観点から検証したものである。
 このレポートはエウノミア研究コンサルタントEunomia Research and Consultingのドミニク・ホッグ氏Dominic Hoggが指揮する国際コンサルタントのメンバーとアイルランドのグループにより作成された。
 公表にあたり、大臣は「私は廃棄物管理政策の見直しを徹底的に行うことを決め、そのとおりのものとなった。エウノミアレポートEunomia Reportは変革への青写真を示している。廃棄物の収集・処理方法を変革することは、我々政府だけでなく経済にとっても有益である。新たな廃棄物処理産業において雇用が創出される。経済全体の競争力を高め、革新を起こし、やがて雇用の創出をもたらすだろう。」と述べた。
 大臣はまたEU目標を達成するため、埋め立てゴミへの課税を増やすことを発表した。課税額は、2010年までに1トンあたり30ユーロにまで増え、2011年までに50ユーロ、2012年までに75ユーロまで増える予定。
「政府は今年これまでに、焼却税の導入も決定した。実際の税率は発表したばかりの埋立税と関連付ける必要があるが、焼却税は1トンあたり20~30ユーロを想定している。」と大臣は話している。
 ゴームリー大臣は、新年の公表を視野に、まもなく政府の新施政方針演説を行う見込み。大臣は最後に、「エウノミアレポートは、アイルランドのゴミ処理をどのように転換するか、その出発点を打ち出したものである。我々は、有効で強固な方針を策定するために重要な基礎となる熟考された調査研究を得て、持続可能な包括的廃棄物管理を達成するための立法、制度、組織的な変革の青写真がある。」と締めくくった。

【出典】
アイルランド地方自治省(環境・遺産及び地方自治省)ウェブサイト
http://www.environ.ie/en/Environment/Waste/News/MainBody,21600,en.htm


優秀自治体賞の贈呈

2009年10月28日 

 ジョン・ゴームリー(John Gormley)環境・遺産及び地方自治大臣は、10月28日、ダブリンのバーリントンホテルで、商工会議所によるアイルランド地方自治体優秀賞の数々の贈呈を行った。
 これはアイルランド商工会議所が環境・遺産及び地方自治省と協力して行っているもので、今年で6回目となる。ゴームリ―大臣は、商工会議所が自治体の優れた実践に関わり、優秀賞を上手にとりまとめた功績を認め、「自治体が環境イニシアチブを推進し、環境改善に寄与する非常に多くのプロジェクトが候補に上がっているのは喜ばしい」と述べた。
 主な受賞団体は2009年最優秀県賞を受賞した南ダブリンSouth Dublin Countyと、2009年最優秀市町村賞を受賞したヨールYoughal Town Coucilである。受賞自治体の全リストは下記のとおり。
 大臣はグリーンエコノミーがアイルランド経済の回復と環境問題への挑戦に立ち向かう大きな潜在力を有しており、政府の持続的経済刷新構想では環境関連の事業分野と雇用創出を重視していると語った。環境テクノロジーはヨーロッパ経済で最も成長している分野の一つであり、アイルランドが自らのグリーンエコノミーの潜在力を最大化し、当該分野での地位を強固にするため、政府も今年初めから環境関連企業と準備を進めている。

<優秀自治体賞リスト>
 最優秀県賞 サウス・ダブリン・カウンティ
 最優秀市町村賞 ヨール・タウン
 スポーツ・レクリエーション優秀賞 サウス・ダブリン・カウンティ
 芸術文化優秀賞 ダブリン・シティ
 顧客サービス優秀賞 サウス・ダブリン・カウンティ
 エネルギー保存優秀賞 トラリー・タウン
 廃棄物管理優秀賞 ドロイダ・バラ
 経済開発優秀賞 ゴールウェー・シティ
 環境イニシアチブ優秀賞 ロスコモン・カウンティ
 ビジネス・パートナーシップ優秀賞 ダブリン・シティ
 行政サービス計画優秀賞 ダブリン・シティ
 コミュニティ開発優秀賞 フィンガル・カウンティ
 テクノロジー優秀賞 リマリック・シティ

【出典】
アイルランド地方自治省(環境・遺産及び地方自治省)ウェブサイト
http://www.environ.ie/en/LocalGovernment/LocalGovernmentAdministration/News/MainBody,21319,en.htm


アイルランドの年間住宅統計2008-20,200世帯以上が2008年住宅計画施策から恩恵を得る-

2009年08月31日 

 マイケル・フィンネラン住宅・地方行政サービス担当大臣は、8月13日、アイルランドの2008年住宅統計を発表した。
 統計は、昨年行われた様々な社会住宅や低廉住宅計画を通して達成された成果を含めた広範囲な住宅施策を公表した。
 大臣は、「2008年のひどい経済環境下にあって住宅分野の重大な挑戦であったにもかかわらず、20,200世帯以上の住宅ニーズに対応し、2007年比で10%の増加を収めた」と発表した。これらは自治体や自主協同組合を通して支援を受けた15,467世帯や、4,567の低廉住宅、さらにまた住宅を購入し住宅ローン控除を受けた189世帯を含んでいる。
 大臣はまた政府の新ホームレス戦略「The Way Home」のよい例として、社会で最も影響の受けやすい分野である住宅ニーズに対し、2008年はいかに継続的に重視してきたかをを明らかにした。
 さらに多様な再生改善計画を通して住宅品質や住宅の環境性能の向上を優先してきたことについても強調した。
 また大臣は、将来的に政府が利用できる資源は限られているとう観点から、生産的でフレキシブルな多様な政策を優先して打ち出すことにより、これまで社会住宅投資計画の大幅な再構築を進めてきていることを示唆した。
 「最も重要な改革は社会住宅の長期賃貸の仕組みを整えることである。国は自治体や住宅協同組合と協力して2,000世帯の住居を今年この長期賃貸方式で提供できるよう積極的に動いている。これは従来の伝統的な建設方式や不動産購入計画に頼るよりも多くの住宅ニーズに対応できるようにするものである。これから続く制約された不動産資源の状況下では、賃貸や革新的な仕組みにより住宅需要を満たすことがより重要になってくる」と大臣はコメントしている。

【出典】
アイルランド地方自治省(環境・文化及び地方自治省)ウェブサイト
http://www.environ.ie/en/DevelopmentandHousing/Housing/SocialHousingSupport/LocalAuthorityHousing/News/MainBody,20958,en.htm

【参考】
The Way Home – A strategy to Address Adult Homelessness in Ireland 2008-2013
http://www.environ.ie/en/Publications/DevelopmentandHousing/Housing/FileDownLoad,18192,en.pdf


「ローカルアジェンダ21 環境パートナーシップファンド」を発表

2009年07月30日 

ジョン・ゴームリー(John Gormley)環境・文化・自治大臣は、5月21日、地方レベルの環境水準の向上に貢献し、建物緑化や持続的なコミュニティを促進するプロジェクトやイニシアティブを取っている地域団体、個人、非営利団体、組織からの参加者を招いて、今年の「ローカルアジェンダ21 環境パートナーシップファンド」の詳細について発表した。

同省は、2009年は合計で35万ユーロの無償資金援助を行う計画である。自治体からの同額補助を合わせると70万ユーロのファンドとなる。
「ローカルアジェンダ21 環境パートナーシップファンド」は、地域レベルでの小規模な非営利の環境プロジェクトを支援することにより、持続可能な環境の発展を促進するものである。このファンドは1997年に65のプロジェクトに資金提供をして以来、様々な形で運営されてきた。2008年には支援したプロジェクトの数は387に達した。
地域の庭園や家庭菜園、たい肥計画、雨水を取り込むシステム、生態学的な教育の主導、環境に関する展示などに渡る、多種多様なプロジェクトと企画が、これまで何年もファンドにより支援を受けた。
「ローカルアジェンダ21は地域レベルで持続的な環境開発を行う一連のプロセスである。また持続的な環境開発の地方の意思決定に、地域社会がより多く参加するようになるためのアプローチである。」と大臣は述べた。
(支援を受ける)プロジェクトは、例えば、廃棄物、生物の多様性、気候変動や環境維持開発のような国の環境政策を補完する環境への意識付けと行動に焦点が当てられるべきである。
「地域の庭園や家庭菜園への関心レベルが非常に高まれば、国内や地域農産物の生産に関心のあるグループを特に勇気付けるだろう。自分の食材を育てることは、お金も節約でき、健康的な娯楽となり、地域共同体精神の向上と二酸化炭素排出の低減、そして食料の生産地から消費地までの距離を縮めるものである。」と大臣は付け加えた。

【出典】
アイルランド地方自治省(環境・文化及び地方自治省)ウェブサイト
http://www.environ.ie/en/Environment/News/MainBody,20312,en.htm#


アイルランドの地方自治体の問題点について(新聞報道より)

2009年05月25日 

・2009年6月に、地方選挙が行われる予定である。しかし、地方自治体にどのような力が実際あるというのだろうか。
・地方議会議員は、ほとんどが中年の男性であり、女性も若者もほとんどいない。会議運営のITは進歩しても、議会の体質は変わっていない。
・そして熱心に議論されているテーマは、地方議員の退職金や、祝日の旅行や、休憩時間の茶菓子の種類についてである。
・道路整備や開発やエネルギー、そして経済危機など、肝心な事柄については、議論は白熱しない。
・今年6月5日の地方選挙では、34のカウンティ及びシティカウンシル、5つのバラカウンシル、75のタウンカウンシルの、計1627人の地方議員が選出される。
・University College CorkのLiam WeeksとAodh Quinlivanの「All Politics is Local : A Guide to Local Elections in Ireland」によれば、一般の人々にとって、地方選挙は一種の謎である。地方自治体のしくみが理解されていない。選挙は重要でなく自分には関係のないことと考えれらている。また、このことは、国政への影響という観点でしか地方選挙を見ないマスコミも助長している。また、アイルランドの自治体は、ほかの国の地方自治体と比べても、見劣りする。教育も交通も観光も保健も警察もやっていない。外国ではこれらを自治体がやることは当たり前である。アイルランドの自治体は、あらかじめ許された事柄しか扱うことができない。財源は中央集権であり、自治体はいまだに関係大臣に多くのことについて許しを得なければならない。そのため自治体には「begging-bowl mentality」がある。
・財政、立法面の自立と、スタッフの充実が必要である。
・CarlowカウンティのマネージャーのTom Barry氏は、「議員たちは地元地域の住民を代表する理事会のように振舞う。そして我々事務局職員は彼等の質問に答えなければならない。」と述べている。Quinlivan氏は「議員たちの中には、埋立地とかごみへの課金といった議論の分かれる事柄について決断をしたがらず、事務局へ判断を押し付け、そして事務局を非難するような者もいる。」と述べている。
・ダブリン市議会では、2004年以降13名の議員が辞職した。Brian Gillen議員は「議員になってみると、その権限の少なさに気がつく。自治体職員たちが改革を望んでいない。」と述べている。
・CorkカウンティのVeronica Neville議員は、なにをするにも制約が多く、福祉政策をするために膨大な時間を要し、公共住宅はひどい状態にあると述べている。
・42年間地方議員を務めたMichael Lynch氏は、「住民の95%は、自治体がなにをやっているか知らない。住民は自分の問題しか見えない。議員になるということは、住民と会い、その問題に耳を傾けることだ。」と述べた。
・GalwayカウンティのConnie Ni Fhatharta議員は1991年以降議員を務めているが、「議員にはなんの力もない。我々にできるのは県の計画と予算を通過させることだけだ。それ以外は、住民の代わりに争いを争うのが主な仕事だ。」と述べている。
・しかし前向きな議員もいる。
・Quinlivan氏によれば、肝心なのは、自治体に適切な財源を確保することである。欧州の他国の人々は、アイルランドでは住民が水道料金を支払っていないと聞くと、驚愕する。住民が地方自治体に対して税金を支払い、それが住民サービスに使われるようになれば、事態は改善するだろう。
・現在、政府のグリーンペーパーにより、ダブリン市へ直接公選首長を導入することが提案されている。直接公選首長が持つ権限として提案されているのは、計画、住宅、廃棄物、水道、下水道などである。首長はまたダブリン交通局の会長も兼ねる。
・しかし、中央政府が、1898年の最初の地方自治法制定時の、中央集権的考え方を放棄するとは考えにくい。

(参考)アイルランドの地方自治体構造
・29のカウンティカウンシル(県)
・5つのシティカウンシル(もとのカウンティ・バラ・コーポレーション。ダブリンなど。都市部の一層制の自治体。)
・5つのバラカウンシルと75のタウンカウンシル(いずれもカウンティの下の二層目の自治体。両者の権能に基本的に差はないが、タウンカウンシルにはかつてのタウン・コミッションが含まれ、歴史的に規模が小さく権限が限られているものがある。)

【出典】Irish Times 2009年5月9日
http://www.irishtimes.com/newspaper/weekend/2009/0509/1224246181566.html


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